GAME MAKE


どこまでも盲目的な愛され方。
危険で、一人善がりな、最上級に甘く狂おしい想われ方。
愛という名の滑稽なゲーム。プレーヤーは二人。先に堕ちるのはどちらだろう。

大好きな三蔵の腕の中で、悟空はふと目を覚ました。
窓に映るのは漆黒の空。果てしなく遠いそこには星が瞬いている。
確かに存在しているのに、手を伸ばせば届きそうなのに、絶対に届くことのない輝き。
今、目の前で眠っている大好きな人。
何度体を重ねても、何度唇を重ねても、絶対に一つにはなれない光。
どこまで行っても存在が平行線のまま。隔てる肌がもどかしい。
回された腕も、紫暗の瞳も、全てをくれてやると三蔵は言ってくれたけれど。
でもそれらは間違いなく三蔵のもので。
俺だって三蔵に全てを差し出しているつもりだけれど、やっぱりこの体は俺のもので。
何回交わったとしても、結局はただの二つの個体でしかないのだ。
いくらどろどろに溶けてしまっても、一つになんてなれやしない。
そんなこと分かりきっているのに。それなのに求めずにはいられない。
これは自分が三蔵に仕掛けられた罠に嵌ってしまっているということだろうか。

「どうした?」

不意に頭上から降ってきた声に反応して顔を上げた悟空は、そのまま三蔵に口付けた。
三蔵は突然のことに一瞬目を見開くが、すぐに唇の端を上げてそれを甘んじて受け入れる。
初めは悟空の好きなようにさせていた三蔵だが、暫くすると呼吸を奪うような激しいキスを繰り返した。
これは悟空が仕掛けた罠なのか。このゲームの流れを掴んでいるのはどちらだろう。

「・・・っふ、ん・・・ぅ、ぁ」

掬いきれなかった二人分の唾液がシーツに染みを作った。
それは先に堕ちたプレーヤーか。

「足りねぇのか?」

揶揄するような三蔵の声が投げかけられる。
今宵ゲームを仕掛けていくのは三蔵。

「足りないよ、全然」

しかし悟空も大人しくゲームの主導権を渡したりしない。
でも今はそんなことよりも目の前にいる人が欲しくてたまらない。
出来る限り体を密着させて。もう空気ですら、二人の間には入れたくない。
三蔵が足りない。全然足りないから、もっともっとちょうだい。
どうせ一つにはなれないのなら、せめて俺の中を貴方だけで満たして。
きっともう三蔵の仕掛けた罠からは抜け出せない。

「ぅあっ!?」
「お前の中は未だに俺のものでいっぱいなんだがな」

三蔵はいきなり悟空の最奥に突き入れた指を、悟空に見せ付けるようにして舐めた。
先程の情事の名残がまだそこには色濃く残っている。悟空の中に注いだ己の欲望。
ゲームの主導権を握ったような征服感。これでコイツはもう俺の餌食だ。

「でも足りない。もっと・・・ほしい」
「・・・・・・好きなだけくれてやるよ」

悟空が最後に仕掛けた甘い罠。
もう大人しく嵌ってしまうしかない。

罠に堕ちたのはどちらが先なのだろう。

三蔵を求めて止まない悟空と、悟空から離れられない三蔵。
いくら二人の唾液が混ざり合ったとしても、いくら二人の欲望が混ざり合ったとしても。
どうしたって一つになれない。だから一つになる擬似行為をずっとずっと繰り返す。
互いに捉えられた。もう互いの他には全く何も要らない。

「このまま全部溶けてまざっちゃえばいいのに」

何度目かの行為のあと、髪を撫でられていた悟空がふと呟いた。
体液塗れになっている自分の状態を指して笑う。
これは罠にかかった結果?それとも罠を仕掛けているところ?

「ここまでどろどろになってたら、混ざれそうじゃん?」
「確かにな」

主語がない言葉でも三蔵には伝わる。その証拠に抱き締める腕の力が強くなった。
俺の全てを差し出すから、貴方の全てを下さい。
きっと一つになれたら叶えられるこの想い。
それは罠に嵌った結果辿り着いた想い?
それともこれからのゲームに生かすための罠?

「俺ね、三蔵がいればそれでいい」
「お前は?」
「三蔵にあげる。だから三蔵もちょうだい?」
「仕方ねぇから、やるよ」

貴方以外に何も要らない。
それだけが残された想い。

どこまでも盲目的な愛され方。
危険で、一人善がりな、最上級に甘く狂おしい想われ方。
ゲームの流れを掴んでいたのはどちらだろう。
仕掛けられた罠に嵌ったのはどちらだろう。
愛という名の滑稽なゲーム。きっと堕ちていったのは二人同時。


冴月壮夜さま/DROP OUT


こちらも三空記念のお話です。
なんだかカッコいい!感じがします。が、同時に少し切ないような。
冴月さま、アップのろくて申し訳ないです。素敵なお話をありがとうございました。