子供は風の子、とはよく言ったものだ。
晴れ渡った寒空の下で元気よく遊ぶ悟空を見て、三蔵は呆れたように溜め息を吐いた。
書類の山に嫌気がさして執務室から抜け出したのに、もう既に暖房が恋しくなっている自分からすると、
非常に理解しがたい光景だと思う。
風邪でもひかれたら面倒だということで、悟空には防寒だけはしっかりしろと言い含めてある。
その言いつけをきちんと守って、マフラー、手袋としっかり防寒しているが

(そこまでして外で遊ぶ必要はあんのか...)

そんな取り留めのない事を思い、紫煙を燻らせているとこちらに気づいた悟空が目を輝かせて走ってきた。
弾んだ白い息が、ひどく寒さを感じさせた。

「さんぞー!お仕事は?」
「知らん」
「いーのかそれ」
「いーんだよ。つかお前寒くねぇのか」
「んーん?三蔵が薄着すぎんじゃね?」
「寒ぃ」

凍えるように体が震えだしたとき、ふと目に入ったのは悟空の手袋。
まだ執務室に戻る気には到底なれない。
だが寒いものは寒いし、出来ることなら温まりたい。

「悟空手出せ」
「?はい」

素直に差し出された両手から、右手の手袋を取り上げると
「寒っ!なに?」と抗議の声が漏れた。
手短に「防寒」とだけ言って、取り上げた手袋を自分の右手にはめる。
少し小さいが、悟空の熱で温まっている手袋は一時的な寒さ凌ぎには十分だった。
そして手袋をはめていない左手で、悟空の右手を捕まえる。
全く読めない動きに初めは戸惑っていた悟空も、納得すると嬉しそうな顔で俺の隣に落ち着いた。

「さんぞあったかい?」
「それなりに」
「人の手袋とっといてそれなりなのかよ」
「煩い。てめぇは体温高いんだから構わねぇだろ」
「俺だって寒いもん」
「なら外出歩いてんじゃねぇよ」
「むーでも外にいたから今こんなときできるんだよ?」
「.........それもそうだな」

冷えた空気の中伝わる熱がひどく心地よかった。
他人の体温なんて煩わしかっただけなのに。
それ以上考えるとロクでもない結論に達しそうだったので、思考を停止して吐き出され続ける白い煙を目で追った。
隣では悟空の吐く白い息が冷えた空気に消えていった。


冴月壮夜さま/DROP OUT


冴月さまより、お年賀のご挨拶にいただいたお話です。
…アップがものすごく遅くてすみません<(_ _)>
悟空も可愛いですが、三蔵も可愛いですね。(えっ(@_@))
片手袋で手を繋いで。ほのぼの可愛らしいお話に癒されました〜。
どうもありがとうございました。