欲しかったのは、そばにいてくれること。
 ただ、それだけ。



Christmas Party


「もう寝ろ」 
 落ちかけるまぶたと戦っていたら、三蔵にそう言われた。
「だいじょーぶ」
 ぷるぷると首を振って眠気を払う。
「半分、寝てるじゃねぇか」
「大丈夫だって」
 そう言ってるのに。
「無理はしないほうがいいですよ」
 八戒先生まで、そんな風に声をかけてくる。
「ちゃんと寝たほうが背も伸びるぞ」
 でもって、悟浄も。……言い方がひっかかるけど。
「まだ、大丈夫」
 しっかりと目に力を入れて答える。
 だって。
 せっかくのクリスマス・パーティなのに。
 終業式の後、『一日早いですが明日、クリスマス・パーティをしましょう』と八戒先生が声をかけてきて。
 それで、今日、八戒先生と悟浄が家に来た。
 八戒先生が三蔵に話してくれると言っていたのだが、どうやら言ってなかったらしく(確信犯じゃないかと思うんだけど。言ったら断られるから、有無も言わさず押しかけちゃおって最初から思っていたんじゃないかな)、あやうくパーティは流れそうになった。
 でも、結局、三蔵は折れてくれて。
 で、四人でクリスマス・パーティをすることになった。
 実は、昨日からすっごく楽しみにしてた。
 家でクリスマス・パーティなんてしたことなかったから。
 すごく嬉しかった。
 一緒にケーキを食べて、ご飯を食べて、話をして。
 ずっと、ずっと、そういうのをしてみたかったから、本当に嬉しかった。
 だってクリスマスって、家で一人で放っておかれるか、どこか華やかな場所に連れて行かれて放っておかれるか、どっちかだったから。
 だから。
 一人で部屋で寝るのは嫌だった。
 そのときみたいに、暖かい場所を、一人、外から覗いている気分になる。
「……ったく」
 微かに呟く声がして、はっと目を開ける。
 どうやら、ちょっと寝ちゃったみたい。
 隣で、三蔵が立ち上がろうとしているのが感じられた。
「やっ!」
 言って、三蔵の膝に覆いかぶさった。
 立ち上がらせないために。
「おい、悟空」
 引き剥がそうと肩に手が置かれたのがわかる。
「ここにいる。ここにいたい」
 しっかりと三蔵の膝を押さえつけて、顔だけあげる。
 ちょっと眉間に皺を刻んでる三蔵の顔が目に入った。
 三蔵が部屋で寝ろ、と言うのなら、従わなくちゃならないけど。
 でも。
 お願いだから、と思う。
 お願いだから、ここにいさせて。
「……さんぞ」
 呟くと、ふぅとため息が聞こえてきた。
 諦めたような……?
 くしゃりと髪がかき回される。
「好きにしろ」
 声が上から落ちてくる。
 好きにしろ。
 ってことは、ここにいてもいいんだ。
 その言葉に、すごく嬉しくなる。
 クリスマス・プレゼントを貰ったみたい。
 なんだかふわふわとした気持ちになった。
「おい、こら、ここで寝るな」
 どこか遠くから三蔵の声が聞こえてくる。
 でも、なんて言ってるのか、言葉の意味がとれない。
 でも、その響きはとても心地良い。
 だから。
 安心して、その場で丸くなった。