ふっと暗闇のなか、悟空は目を覚ました。
一瞬、自分がどこにいるのかわからない。
きょろきょろと辺りを見回した悟空は、隣に三蔵の姿を見出して大きく息を呑んだ。

そっと手を伸ばして、髪に触れる。
これが現実かどうか確かめたかったから。
髪ならば、気がつかれない。そう思ってのことだったが。
微かなうめき声とともに、三蔵が目を開けた。
驚いて悟空は手を引っ込める。

「あ……、ごめん。えと……」

しどろもどろになる悟空を、三蔵は引き寄せた。そして、もう一度、息を呑む悟空に囁きかける。

「ちゃんと、ここは家だ」
「うん……」

ほっとしたように悟空はいい、三蔵の胸に額を押しつけるようにして寄り添う。
しばらくそのままでいたが。

「……さっき、夢、見てた。すごく小さい頃の夢」

ぽつり、と悟空は呟く。

「サンタさんに三蔵をお願いした」
「そんなこともあったな」

まるであやすように、悟空の頭を軽く撫でながら三蔵がいう。

「あのとき、だれかになにか言われたのか? なにを聞いても、お前、答えなかったが」
「ずっと一緒にはいられないって……。いつか離れることになるんだからって……」
「言われたのか? 誰に?」
「知らない綺麗なお姉さん。たぶん、その当時の三蔵のお見合いの相手だったんじゃないのかな」

ぐっ、と悟空を撫でる手に力が入り、三蔵が怒っているのが感じられた。
悟空はふっと笑みを浮かべる。

「昔のことだよ。でも……」

悟空の手が三蔵の服をぎゅっと掴む。

「ずっと怖かった。いつか三蔵のそばから離れなくちゃいけなくなるんじゃないか……って」

泣きそうになって、悟空はぐっと唇を引き結ぶ。
そんな悟空の頭を、ぽんぽんと三蔵は軽く叩くように撫でた。
それから、もっと近くに抱き寄せる。

「そばにいる」

つむじのあたりに落とされた唇とともに囁かれた言葉に。
ようやく悟空は笑みを浮かべた。


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