髪を撫でる優しい手


三蔵の腕のなかで、ほぉっと悟空が溜息のようなものをついた。
頬にかかる髪をそっと指先でどけて、その表情が良く見えるように覗きこむようにする。
と、閉じていた悟空の目蓋があがり、金色の目が現れた。

灯りを落した部屋のなかでも、微かな光を映して揺れる金色の瞳。
そっと三蔵が唇を寄せると、くすぐったそうな笑い声が響いた。

「さんぞ」

舌ったらずの呼び方は、小さな頃を思い起こさせるものだったが――。

「さんぞ」

こんな風に甘くは響かなかった。
寄り添うように体を預けてくる悟空を受け止めて、三蔵は見た目よりも柔らかな髪に指を滑らせる。
ゆっくりと撫でてやると、安心したように体から力が抜けていくのがわかる。
そういうところも小さな頃と同じだが。

「悟空」

呟くように名前を呼んで、三蔵は悟空の頭のてっぺんに唇をひとつ落とした。


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