Root Cause
まぶ……し……。
目蓋の裏に光を感じる。
朝……?
ぼんやりと思うがまだ寝ていたくて、無意識のうちに光の届かないところを探してもぞもぞと動いていたら、温かいものに触れた。
途端に、ほわってなる。
――三蔵。
安心して、もう一度寝直そうとしたら。
頭をくしゃりとかき混ぜられて、三蔵が起き上がる気配。離れていく。
重いまぶたと格闘してどうにか薄く目を開けたら、苦笑しているような顔が見えた。
なんで離れてくんだよと、むぅっと寄せた眉間に軽く唇が降りてくる。
「メシ、作ってくる」
かけられた言葉に、う、って思う。
緩やかに覚醒していく意識とともに、腹が減っているのも意識する。
と、三蔵がクスリと笑った。
「昨日、さんざん美味しく食べさせてもらったし、な」
な……っ。
一気に目が覚めて、ぱっと起き上がろうとするが――。
「……っ」
力が入らなくて、ぺしゃって潰れる。
「無理すんな」
「……だれのせいだよ」
シーツに突っ伏して、恨みがましい目で見上がれば。
「お前のせいだろ」
三蔵は涼しい顔とともに、そんな答えを返してきた。
それから少し屈んで。
「あんな顔されて、我慢できるわけねぇだろ」
耳元で囁かれる――艶を含んだ声。
ゾクリ、と背中を甘い疼きが駆け抜けていく。
――ズルイ。
「ったく、言ってるそばから。朝からそういう顔で誘うんじゃねぇよ」
頤に手をかけられて、多少無理な姿勢のなか、唇が塞がれる。
「……んっ」
舌を絡めとられて……朝にしては、濃厚なキス。
遊ぶように絡めては逃げていく舌を追いかける。すると、また絡めろとられて、キスはますます深くなる。
「ふ……ぁ……っ」
何度もキスを交わし、やがて離れていく唇に吐息のような声が漏れる。
くたりと崩れ落ちて息を整えていたら、軽く目のうえに唇が降りてきた。
「続きはメシを食ったら、な」
「……へ?」
「このままシテもいいが、メシ食わせねぇと、お前、うるさいし」
「な……っ」
んな、朝から、ぜってぇ、シねぇからっ。
そういおうとしたのに、パタンと閉まった扉の向こうに三蔵の背中が消える。
もう。
ぷぅっと頬を膨らませる。
すっかりと目が覚めてしまったから、ゆっくりと気をつけて起き上がる。
体が重い。それにあちこち軋んでるみたいだ。
……三蔵のあんぽんたん。
けど。
膝を抱えて丸まって、少し笑う。
昨日の。
三蔵は俺のせいだっていうけど――。
そもそもは三蔵のせいなんだけど。
それ、知ってるんだろうか。
だって。
普段は抜けるように白い肌が淡く染まっているさまとか。
声を出すのが負けとでも思っているのか、軽く目を瞑って微かに眉を寄せて耐えているかのような表情とか。
そしてそれでも微かに漏れる吐息とか。
そんなの見たら、どうしようもなく――。
思い返すだけでネツがあがってきて、ちょっと息をつめる。
……まったく。
考えただけで、そんな風になってしまうほど艶っぽいというのに、三蔵はきっと自分のことに気づいていない。
本当に、あの人は自分を知らない――。
なんだか可笑しくなって、だれもいないというのに、こみあげてくる笑いを隠すように腕のなかに顔を埋めた。