3. 煌く太陽、輝く満月。
明るい午後の日差しに照らされて、ジープの前に座る三蔵の金の髪がキラキラと煌いていた。
風になびくその髪に触れたいという欲求と、悟空は必死なって戦っていた。人前でそういうことをするのを、三蔵は凄く嫌がる。そんなことをしたら、間違いなくハリセンが飛んでくる。
でも、綺麗。本当に綺麗。
無意識のうちに手が伸びた。
そして――。
「あれ?」
真っ暗な部屋のベッドの上で、悟空は目を開けた。パチパチと瞬きを繰り返す。
今、自分がいる状況がよくつかめない。さっきまでジープの上にいたのに……。
「夢……?」
どうやら夢を見ていたようだ。なんだが、とてもリアルな夢。
ふと視線を横に向けると、窓のそばに置かれた椅子に三蔵が座って、外を見ていた。
窓の外には、大きな満月。
月の光が部屋に差し込み、三蔵の髪は昼間とは違う柔らかな輝きを放っていた。
やっぱり、綺麗だ。
悟空は起き上がろうとした。
「ってぇ!」
と、途端に下半身に鈍い痛みが走った。思わず、そのまま固まってしまう。
「無理すんな」
三蔵の声がした。背後からの月の光が明るくて表情は見えないが、苦笑しているようだ。
「誰のせいだよ」
悟空は少し拗ねたようにそう言い、そろそろと動いてベッドから降ると、裸足のまま三蔵の方に歩いていった。
三蔵の横に立つ。三蔵が座っているせいで、いつもとは違って三蔵を見下ろす形になる。
悟空は手を伸ばして三蔵の髪に触れた。
「きれー」
ため息が漏れた。柔らかな、絹のような感触が心地良い。
悟空は髪の毛を一房掬い上げると、唇を寄せた。
「……まだ足りないのか?」
面白そうに三蔵が言う。
「ちがっ!」
悟空は真っ赤になって三蔵から離れようとするが、三蔵の手に腕を捕まれて、そのまま引き寄せられた。
崩れ落ちるように、三蔵の腕の中に倒れこむ。
抱きしめられて、ふっと体の力が抜ける。絶対的な安心感が満ちてくる。
悟空は三蔵の顔を見上げた。
月明かりに照らされた三蔵は本当に綺麗で、思わず息を止める。
煌く太陽、輝く満月。その二つよりも、綺麗な人。この世で唯一の……。
三蔵の唇が降りてくる。
悟空はゆっくりと目を閉じた。