20. 背中合わせの温もり


 いつものように襲ってきた妖怪の集団。今回はかなり人数が多い。しかも、なんか頭を使っているらしい。気がついたら、八戒と悟浄から引き離されていた。どうやら、一人一人に分断して、個別に片付ける作戦のようだ。
 普段なら、こんなの何でもない。だって、俺達、あんま連携して戦っているつもりはないから。一対一、いや、一対十でも全然OK。
 普段ならば。
 でも、今回はちょっと違っていた。本日、三度目の襲撃。いくらなんでも多すぎやしないか。
「よっぽど、暇なのかなぁ」
「何が」
 どうやら声に出して呟いてしまったらしい。小銃の弾を素早く取り替えながら、三蔵が聞いてきた。
「こいつら。だって、今日、三回目だぜ。三日連続ってのはあったけど」
 如意棒を一閃させて、飛び込んできたヤツを地面に叩きつけた。
「同じヤツのわけないだろう。全部殺してるんだから」
「あ、そうか」
 如意棒を三節棍に変え、敵のただ中に突っ込んで行く。振り回し、打ちおろす。その変幻自在な動きについてこれるヤツはいない。薙ぎ倒して、また三蔵の元に戻る。
「お前、庇っているつもりか」
 背中ごしに三蔵の声が聞こえてくる。
「ちげぇよ」
 また一人、地面に打ち倒す。ったく、キリがない。
「こーんな弱っちいヤツらに三蔵がやられるもんか」
 数だけ揃えたってところか。弱いのに、向かってくるなよ。情けなんかかけない。覚悟の上で向かってきてるんだろ。
「どっちかってーと、俺のため」
 もちろん、本日三度目に襲撃に三蔵はかなり堪えている。この人、そーゆートコ、絶対に見せないけど。ただの人間が、俺達と同じように動けるはずがないんだ。
 だけど、だからと言って、三蔵は負けない。特にこんな弱っちいヤツらには。
 強い三蔵。
 俺は、それを信じているから。だから、庇わない。これは違う。
 背中合わせの温もり。それが心地良いから。
「……お前、余裕だな」
 口に出したつもりはなかったが、考えていたことが伝わってしまったらしい。三蔵が呆れたように言った。
 背中を預けてくれるのは、信頼してくれている証拠。そんなオイシイ状況、逃すわけにいかないだろう。
 だから、三蔵のそばを離れない。