揺り籠の護り手〜始まりの始まり


「古書の管理は俺には無理です。専門の人を雇った方がいいと思いますが」
「いえ。商売をしようというのではないのですよ」
 穏かに微笑むと、光明は後ろを振り返った。なにか言い聞かせるように、小さく優しく囁きかけている。
「これは、あなたにしか頼めないのです」
 それから三蔵に向き直って、そう言いながら体の位置をずらした。と、光明の後ろに隠れるようにして、子供がいるのが見えた。子供は、三蔵に見つかったことがわかるとびっくりしたような顔をし、ぱっとまた光明の後ろに隠れてしまう。が、しばらくして、おずおずと光明の後ろから顔を覗かせた。
 茶色の長い髪、大きな金色の瞳。胸の前で、図鑑くらいの大きな本を抱えている。
 不思議な雰囲気の子供だ。
 最初に一瞬だけ見えた時もそう思った。その時は、いまどきの子供にしては珍しく着物を、それも丈の短い着物を着ていたからかと思ったが、そうではないことがわかった。
 じっと見つめてくる。不思議な色合いの瞳。
 そのせいだ。
 色味が珍しいからというのではない。それを言ったら三蔵も珍しい色の目をしている。
 なんというか、見ていると吸い込まれそうな――魂を持っていかれそうな、そんな不思議な感覚が呼び起こされる。目が離せなくなる。どのくらいそうやって見つめ合っていたのか。
 不意に、子供がトコトコと近寄ってきた。すぐそばまで来ると三蔵を見上げ、嬉しそうに笑う。
 ――キラキラ。

continue・・・