夜の果て
「悟空」
もう一度呼ばれて、悟空はそっと目を開けた。
手を伸ばして。
綺麗な紫暗の瞳を直前まで見つめたままで、その唇に触れる。
唇で―。
「ご……」
驚いたような三蔵の声を絡め取るようにキスをする。
確かこんな感じ。そう思いながら。
知識だけはあったから。
実践したことは、もちろんなかったが。
「―なんのつもりだ」
唇が離れると、きつい目で睨まれた。
だけど、あのときに見た冷たい瞳ではない。それに少し安堵する。
「別に」
三蔵の問いかけにわざと素っ気なく答えた。
望む意味で、ではないが、たぶん自分は特別なのだ。 だけど想いを告げれば、きっとそうではなくなる。
四六時中、一緒にいたがるのが重いのならば、こんな想いは、それよりももっと重たいだろう。
告げればきっとあの冷たい瞳が待っている。
でも告げなくても、隠しておくことはできない。もう普通の顔をしてそばにいることはできないから。やがては、ばれる。
だから、その前にただ一度だけ。
ただの一度だけでも、すべてを手に入れることができるのならば。
「ずっと野宿続きだったし、昨日はあのお姉さんに邪魔されてだれか適当な相手を見つけることなんてできなかったんだろ? だから」
すっと股間に手を伸ばすと、三蔵が身を引くのを感じた。悟空はさせじと、身をすり寄せて、耳元に唇を近づける。
「いいじゃん、こういうのも。ここ、当分、だれも来ないし」
唇をずらして、もう一度キスをする。
continue・・・