誓言
「ん……っ」
触れ合う唇が熱い。
軽く、ただ触れるだけのキスなのに、そうやって触れ合うことが久し振りすぎるせいか、そこから蕩かされてしまいそうだ。
寺院では当たり前のように触れ合っていたのに、旅に出てから一度もそういうことをしていない。いろいろと目まぐるしく、落ち着いて休めることも稀だったからそれも仕方ないことかも、と思っていたが――。
改めてこうしていると、こんなにも触れ合うことを望んでいたのか、と思い知る。
満足げに吐息をつき、悟空はぎゅっと三蔵に抱きついて胸に顔を埋めた。温かい。三蔵の匂いがする。
と、顔をあげさせられ、またキスの雨が降る。
幾度かの軽いキスの合間に下唇を軽く食まれた。驚いて息をつく。と、口を開けたところから舌が入り込み、ゆっくりと口内を探っていく。
自分とは違う柔らかなものが触れてくる感触に、体の奥から湧き立つような感覚が躍り上がってくる。
舌を絡め取られ、戯れのように翻弄される。触れ合わさっていたと思ったら解かれ、追いかけようとすると逃げられ、また絡め取られる。
頭の芯が痺れたようになって、何も考えられなくなる。ただ夢中になって唇を重ね合わせる。
やがてそっと唇が離れていき、目尻にと落とされる。悲しいわけでもないのに、知らぬ間に流れ落ちていた涙を拭われる。
「ん……っ」
ただそれだけのことなのに、そんな些細な感触にさえ反応して、吐息が漏れる。
その間にも肩当てが外されて岸に置かれ、上に着ているものも、すっぽりと頭から抜かれた。直に触れ合う素肌が心地よくて、下も脱いでしまおうとするが、腰の位置くらいまで水が来ている川に入ってしまったためびしょ濡れで、特にジーンズは足に張り付いて脱ぎにくくなっていた。
とりあえず自分でベルトを外そうとするが、震える指ではうまく外せず――。
と、ふわりと体が浮いた。
三蔵に抱きかかえられるようにして、近くの岩に座らされる。同じ目線の高さに三蔵の顔。正面からそうやって見つめると――すごく綺麗。
そして。
紫暗の瞳の色がより深みを増している。
悟空だけを見つめる、悟空だけが知るその瞳――。
体の奥の奥がじゅんと熱くなる。
これから行われようとすることがわかっているからなおのことだ。
触れてくる手。かかる熱い吐息。そんな時にしか聞くことのできない響きの良い、艶を含んだ低い声――。
そんな声で名前を呼ばれたら。
「……――悟空」
思わず悟空の体が戦慄くように震える。
「少し足をあげろ」
何も考えられず、ただ言われた通りに水に浸かっている足をあげる。と、靴を脱がされて、岸にと投げられた。それから三蔵の手がベルトに伸びてきて。
「……あ」
悟空は目を見開く。
これが外されたら、次は――。
continue・・・