終末を越えて
なんだ――?
足を踏み入れた途端、ざわりと嫌な感触に包まれた。
やけに穢れが濃い。
夜の町のあちこちの影に潜む、闇より濃い穢れ――。
これは、本当になんだろう。
このところもうずっと、こんな強いものは感じたことがなかった。時をかけ、浄化され、もうそんなに強いものは残っていないはずなのに、どうしてこんな。
昔は――あの頃はこんなのはいくらでもあったけど。
ぶぅぶぅと文句を言いながら、皆で消して回っていたあの頃は。
微かに胸が痛んだ。
ふわりと温かな空気が周りを取り囲む。まるで抱きしめられたかのように。
「――大丈夫」
声に出して言う。
「行こう」
夜の闇を照らす、大きな月の明かりを頼りに、とりあえずの様子見に歩き出す。
実際に歩いてみると、ヤバそうなのはそんなに多くはないのだとわかった。大半がしばらくすればまた表には現れてこなくなるよう小さなもので、特に気にするようなものではない。が、その小さなものの数が尋常ではなかった。気配が寄り集まってあんなにも強い感じがしていたのだ。
しかし、なんだってこの通りにこんなにたくさんの穢れが現れているのだろう。
あの時――牛魔王を倒した時、強大な負の波動は無数の穢れとなって世界のあちこちにと飛び散り、それに取り憑かれた人や妖怪によって、各地で争いが起きた。穢れを祓うにしても数が多すぎて、人にも妖怪にも、そしてその他のありとあらゆるものに深刻な被害が出た。
人や妖怪に取り憑かなかった穢れや、宿主が死して行き場をなくした穢れは大地が受け止め、それがまた大きな災厄を引き起こさないよう、その奥深くに隠した。ゆっくりと時間をかけて浄化するために。
あれから長い長い年月が過ぎ、最初の穢れに取り憑かれた者もいなくなり、穢れのほとんどが大地にと封じこまれた。だけど、それは完全ではなく、たまにその穢れが表に漏れ出ることがある。偶然だったり、負の感情に促されたり。
なのだが。
この通りの穢れは、偶然にしても、人の負の感情によるものにしても数が多すぎて不自然だ。いったいどういうことだろう。
continue・・・