それでも巻き戻ることなく旅は続いていく
・・・
「明日の朝はこっちの食堂に集合ってことで。朝食はつけていただくようお願いしましたので。ただ、明日出発できるかどうかは――」
自然と四人は窓の外を見る。
「まぁ、微妙なところですね。いまと同じくらいの雨だとちょっとこの先が山道なので心配ですし……。まぁでも、明日起きてからの話ですね」
「おう。じゃ、おやすみー」
それぞれの荷物を手に、一行は二階へとあがっていき、特に申し合わせたわけではないが、いつも通り、三蔵と悟空、八戒と悟浄に別れて部屋に入る。
「割とまともな部屋」
広くはないが、寝台が二つと、小さなテーブルと椅子が二脚置いてある。旅をしていると宿屋にもピンからキリまであるのがわかる。ここは掃除も行き届いているようだし、まぁまぁ良い部類に入る部屋だった。
悟空は荷物をおくと、貰ったタオルをいったん椅子の背にかけ、テーブルに缶詰を並べていく。と、その最中に。
「三蔵?」
いきなり後ろから抱きしめられた。腕の力が強い。強引に顔を三蔵の方に向けられる。
「ちょ、三蔵……っ」
押しとどめようとするが、唇が重なり、間を割って舌が入り込んでくる。最初から深いキスに、頭が芯からクラクラと痺れてくる。
そういえばずっと野宿続きだったので、こんなことをするのも久しぶりだ。高められる熱に身を委ねてしまいそうになるが。
「……さんぞ」
息継ぎの為に少し離れた唇の隙を縫うように、悟空がそっと自分と三蔵の間に手を差し入れた。三蔵の眉間に皺が寄る。邪魔だ、というように手首が掴まれるが、悟空はもう一方の手を伸ばして、三蔵の髪に触れる。
「大丈夫だよ。俺はどこにもいかない。ずっとここにいる」
ふっと三蔵の表情が動いた。確かに悟空の方を向いているはずなのに、どこも見ていないような、暗い紫の瞳に光が戻ってくる。
「逆に、さ。嫌がっても離れねぇから覚悟しなね」
にっこりと笑うと、三蔵が溜息をつきそうな表情を浮かべた。そして。
「ひゃっ」
手のひらに突然、濡れた感触を覚え、悟空は驚いて反射的に離れようとするが、手首が掴まれたままだったので動きを阻まれる。面白そうな表情を浮かべている三蔵に、悟空は頬を膨らませるが。
――もう大丈夫。
同時に安心感も覚える。
いつもの三蔵だ。
continue・・・