SETP BY STEP
ふと三蔵は膝に重みを感じ、視線を落とした。と、そこに悟空がいた
口を開けばものすごく騒がしいのだが、こんな風に静かに傍にいる分には、あまり気にならない。気配がないというわけではなく、どちらといえば静かにしていても騒がしい気配がするのだが、その気配にはどういうわけか慣れてしまっていた。
「……おい」
とはいえ、いつの間に潜りこんできたのだろう。それすら気がつかなかった。
「邪魔だ、どけ」
「別に邪魔してねぇじゃん。俺だって新聞、読みたい」
「読んでねぇだろうが」
「読んでる」
「嘘つけ。あっちに行ってろ」
「やだ」
ぷくっと頬を膨らませ、どかせまいとするように、悟空は三蔵の膝の上に突っ伏す。
「どけ」
「やだ」
短い応戦の後、三蔵は溜息をつく。
この旅に出る前、忙しくてろくに話をする暇もなかったから少しでも傍にいたいのだろう。
無理にどけることもできるが、意外とこの小猿は強情だからその応酬も面倒だ。確かに膝のうえにいるだけで新聞を読むことを阻害されているわけではないので放っておくことにする。
と、それがわかったのか、小さな忍び笑いとともに楽しそうに足がパタパタと揺れる。
そんな風に悟空は、しばらく膝の上でおとなしくしていたが。
「なぁ、三蔵。肉体関係ってなんだ?」
不意にそんなことを言い出した。
「また、その話か」
「だって悟浄が気持ちいいもんだって言ってた」
この街に来るまでの道すがらなにか話していると思ったら。
「あのクソ河童」
三蔵は小さく悪態をつく。
「なぁ。三蔵」
「興味ねぇから、どんなんなのか、俺も知らねぇよ」
「そっか」
少し残念そうに悟空がいう。また足がパタパタと揺れる。それを見ているうちに。
「試してみるか?」
三蔵の口から言葉が滑り落ちた。
continue・・・