SETP BY STEP 〜Lesson2


 朝。
 どこかで小鳥のさえずる声が聞こえる。瞼の裏に柔らかな日差しを感じつつも、むぅ、と寝がえりをうち、再びまどろみに落ちようとしたところで隣で動く気配がした。
「さんぞ……?」
 と、悟空は半分寝ながらも起き上がる。横を見、それから辺りを見回し、もとめる姿がないことに気付くと小首を傾げた。その頃にはもう完全に目が覚め、寝台から軽やかに飛び降りると、パタパタと足音をたてて部屋を飛び出る。そうやって走っていった先に、金色の光が見えてきて、悟空は笑みを浮かべた。
「おはよう」
 歯を磨いている三蔵にそう声をかけるが、返事はない。が、特に気にした風もなく、悟空も三蔵の隣にたって歯を磨き始めた。歯を磨き終わり、口をゆすいで、顔を洗って、ぷるぷるとまるで水に濡れた仔犬のように頭を振っていると。
「ドーブツか、おまえは」
 目の前にタオルが差し出された。
「ありがとう」
 受け取ってごしごしと顔を拭く。それから。
「おはよう」
 ともう一度、改めて挨拶をする。
「あぁ」
 今度は答えが返ってくる。それに悟空は嬉しそうな、全力の笑顔を向ける。
 無邪気な子供っぽい笑顔に、なぜか三蔵は溜息をひとつつくと、ごしごしと顔を拭いている悟空に手をのばし、はだけてしまっている夜着の前をきちんと合わせる。
「どうせ脱いじゃうのに」
 その言葉に三蔵は悟空の耳元に口を寄せて囁く。
「痕。見せつけたいというのなら、俺は構わないが」
 一瞬おいて、まるで音をたてるかのように悟空の顔が赤くなった。クスリと笑い、三蔵は目の前の悟空の耳朶を柔らかく食む。
「ちょ……っ、三蔵っ」
 濡れた音が直接耳に響き、思わず悟空は肩を竦める。するりと夜着の会わせ目から手が忍び込んできて、滑らかな肌の感触を楽しむように滑っていく。
「駄目。駄目だ……って」
 悟空が上擦ったような声をあげる。金色の目が潤み出し、唇から微かな吐息が漏れはじめる。見た目の子供っぽさは変わらぬはずなのに――どこかしら艶があるように見えるのは。
「……っ」


continue・・・