Wanderer -Daybreak-
部屋に戻ると、抱きすくめられた。それから抱きあげられ、ベッドに降ろされる。
三蔵に触れられるのはいつまでたっても慣れない。
わき腹から上に、ただ体の線を辿るようにそっと触れられるだけで、悟空は吐息を漏らす。
ただそれだけのことなのに、甘い声があがってしまいそうで手で唇を覆うと、手首が掴まれて離された。
「声は殺すな」
それはたびたび言われていることなのだが、自分でもどこから出ているのかわからない声はとても恥ずかしい。だから唇を噛みしめて堪えようとするが、柔らかく唇が重なってきた。
三蔵を傷つけてしまうかもしれない。
それで唇を噛みしめるのをやめようとすると。
「……んっ」
重なる唇の間から、声が漏れる。
本当に恥ずかしくて、逃げ出したくなる。悟空は三蔵を押し戻すかのように手を突っ張る。すると、手を取られ、指を絡められた。
しっかりと繋がれた手に、悟空の抗うような動きは止まる。少し不思議そうに悟空は繋がれた手を見、それから三蔵の顔を見あげる。
そして、胸を突かれる。
間近で三蔵を見るのは、本当に綺麗で――綺麗すぎるくらい綺麗で、泣きそうになる。
ふわりと目の端に唇が触れてきた。本当に滲んでいた涙を舐めとられる。
「……っ」
舌の濡れた感触はなんだか生々しくて、身を竦める。すると、クスリと笑い声がした。
あまりに物慣れないのが可笑しいのだろうか、となんだか情けない気がして、悟空は俯いてしまうが。
「そんな顔をするな」
額に柔らかく唇が降りてくる。
「イチイチ可愛らしい反応だ、と思っただけだ」
そんなことを言われては、ますます顔があげられない。
と、閉じてしまった目のうえに、頬に、羽のように柔らかく唇が触れてくる。
唇のうえにもひとつ。触れるだけの柔らかなキス。
促されるように、おずおずと目を開けると、紫暗の瞳がじっとこちらを見つめていた。
どうしても慣れなくて息を呑むが、なんだか三蔵の方も同じように少しだけ目を見開く。不思議に思い、悟空はちょっと小首を傾げて三蔵を見た。と、三蔵の顔に笑みが浮かんだ。
「……ったく、お前は」
ふわりと抱きしめられる。
「初々しい雰囲気で、どうしてそんな風に誘ってくる?」
そしてさらに意味がわからないことを言われた。
continue・・・