「……で、なんの用だよ」
 目の前のソファに深々と座って、煙草をふかしている男に声をかけた。
 別に話しかけたいわけではないが、こちらが黙っていればいつまでも黙って煙草をふかしていそうな気がして。
「別に俺には用はねぇ」
 だが、返ってきたのはこんな答え。
 しかも、それ以上説明する気はないらしく、ふぅっと紫煙を吐き出したっきり、口をつぐむ。
「こんなところまで連れてきてそれはないだろっ!」
 こんなところ――高級ホテルの最上階。丸々1階分が部屋になっている、スィートというよりはペントハウスというところ。
「ついてきたのはお前の勝手だ。もっとも、そんな格好をしているところを見つかったら、いろいろとマズイだろうが、な。それとも、金蝉がご寵愛の子供は人形のように愛らしいという噂だが、本当にお人形さんってわけか?」
 クスリ、と意地悪そうな笑みが浮かぶ。
 ……この格好なら、絶対、誰にもバレないって言ってたのに。天ちゃんの嘘つき。
「あんた、金蝉の親戚?」
 反応を窺いつつ、尋ねる。
 金の髪に紫の目。
 この容姿。金蝉にそっくりだ。親戚というより、双子の兄弟といったほうがいいくらい。
 だけど、会ったことはない。
 一度もない。
 だから、敵か味方かわからない。
 味方だったらいいが、敵だったら――。
 金蝉の敵だったら、容赦はしない。
「さあな」
 またもや、金蝉と同じ綺麗な顔に、意地悪そうな笑みが浮かぶ。
 余裕をこいてるようで、ムカつく。
「だが、俺には金蝉と違って人形遊びの趣味はねぇよ」
 そのうえ、こんなことまで言われて、さらにムカつき度がアップする。
「お前、それが嫌で逃げ出したのか?」
「違うよ」
 つかつかと歩み寄って、距離をつめる。
 ぐっと近寄ってその胸ぐらを掴む。
 間近に綺麗な顔。
 金蝉とは違って、その目は鋭利な光を湛えている。
「ね、可愛いだけのお人形かどうか試してみる?」
 だが、囁くように言うと、微かにその目が見開かれた。
 ふん。
 結局は、こんなもん。
 見てくれにだまされる。
「なんて、ね」
 そういって微笑み、離れようとする。
 だが。
「試させてもらうのも、一興か」
 手首を掴まれた。
「嘘だよ。そんなのもわかんねぇの? 離せよ、エロ親父」
 思いっきり振り払う。
 だけど、掴まれた手は外せない。
 こいつ――。
 まったくそんな気配はなかったが、強い。
 かなり、強い。
「……っ!」
 手加減なしで、掴まれていない方の拳を顔面に叩き込む。
 だが、瞬きもしないで、眼前で受け止められた。
 そのまま間髪も入れずに、引き寄せられる。
 そして。
 目の前がぐるん、と回る。
「なにをするっ!」
「なにをするもなにもないだろう? お前から誘っておいて」
 見えるのは、どこか酷薄そうな笑みを浮かべる綺麗な顔と、天井――?
「やめ……っ!」
 喚こうとした口が塞がれる。
 手ではなく、唇で。
 びっくりして、体が固まった。
「そんな怯えたような表情は、男を誘うものだってわかってやっているのか、お前?」
 もう一度、綺麗な顔が近づいてくるのがわかったが、動けない。
 逃げろ、と。
 頭の中では警鐘が鳴り響いているのに。
 どうして――?
「……悟空」
 低い囁き声に、体が震える。
 そして――。


illastrated by 藤谷まことさま(あおいとり)
(written by 宝厨まりえ)


藤谷まことさまのサイト「あおいとり」の1周年企画で「好きなキャラに服を着せるなら、何を着せたいか」のリクエストを募集なさっていて。悩みに悩んで「ゴスロリ悟空と黒服三蔵」をリクエストさせていただきました。…イロモノ? 自分ではカクジツに着ませんが、実は割と好きです。ゴスロリ。可愛いから。
でもって。
描いてくださったのが←ですっ!
すごい綺麗ですよね、このイラスト。悟空のレースとか細かいところまで描いていただいてるし。そうなんです、よくよく考えると面倒なリクエストでした。ごめんなさい。それなのに、仇を恩で返してくださって本当にありがとうございました、まことさん。
そして、ですね。
悟空が可愛くて、艶っぽい…。
あまりの可愛らしさに、やられちゃったまりえさんの妄想が↑です。
ご、ご、ごめんなさい。ステキなイラストに駄文を。
気を悪くしないでくださいね?
…途中で終わってるほうがダメかしら。続きは…続きは……(フェードアウト)



【追記】
と、フェードアウトしたはずなんですが。
戻ってきて、といわれてまして(笑)
ちょっと(ますます余計な)続きなんぞ書いてみました。
が、申し訳ありません。必然的に年齢制限あり、です。その手の表現が苦手な方、およびお子さまはご遠慮ください。
あ、あとですね。過大な期待はしないようにお願いいたします(爆)


それでは準備はよろしいですか?

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