To Know Him is to Love Him (1)


夜中にふと目が覚めた。
今日は起きていようと思ったのに、いつもみたいに意識を手放してしまったらしい。
起き上がろうと少し体を動かしたところ、強い力で引き寄せられた。
三蔵の胸に抱かれる。
びっくりして顔をあげると、目を瞑ったままの三蔵の顔が目に入った。

眠っている。

ということは、この手の強さは無意識?
言葉より伝わるものがあって、なんだか胸がいっぱいになる。

三蔵……。

声には出さず、心のなかで呟く。
時々――ううん、いつも不思議に思う。
どうして、こんなに綺麗な人が俺をもとめるのだろう。そばに置いておこうと思うのだろう。
そっと腕の中から抜け出して、ベッドから降りようと片足を床についたところ、腕を掴まれた。

「……どこに行く?」

少しぼーっとしたような声。寝起きで、まだ完全に焦点が合っていない目。
こんな顔、他人には絶対見せないんだろうな、と思いながら答えた。

「自分の部屋」

一緒に暮らすにあたって、三蔵が使っていない客室を俺にくれた。ちゃんと自分の部屋があったほうがいいだろうって言って。その上、金蝉の病気でお金がかかって、売れるものは全部売っちゃったから、ほとんど身一つだった俺のために、いろんな家具まで揃えてくれた。
ありあわせのものでいいって言ったら、ずっとここで暮らすんだからちゃんと選べと言われた。
凄く嬉しかった。
そして、今日、ベッドが届いた。

「一人で寝たいのか?」

三蔵が起き上がり、髪を掻き揚げながらそう聞いてくる。
答えられずにいたら、ため息が聞こえてきた。

「お前、ヘンに遠慮したり、気を遣ったりはよせ」

掴まれたままだった腕を引かれる。

「で、どうしたいんだ?」
「――三蔵と一緒がいい……」

抱きしめられた腕の中、小さな声で答えた。と、更に近くにと引き寄せられた。

「なら、ここにいろ」
「三蔵……」

どうしてこの人はいつも安心させてくれるんだろう。
背中に手を回して、ぎゅっと抱きついた。