To Know Him is to Love Him (2)


「三蔵、あのね、明日なんだけど」

腕の中に抱きしめられたままで呟いた。

「明日、用事があるって言ったけど……」

明日は土曜日で、でも出かけるからお昼の用意は自分でしてね、と言ってあった。

「もし、三蔵が暇で嫌じゃなかったらでいいんだけど、一緒に行ってほしいトコがあるんだ。あの……金蝉の――俺の育ての親のお墓参りなんだけど……」

沈黙が返ってくる。
もしかして寝ちゃったのかと思って顔を上げたら、三蔵が奇妙な目でこちらを見ていた。

「あ、あのね、暇じゃなかったらいいんだ。ちょっと、言ってみただけで……」

慌てて言い募ろうとしたら、三蔵がふっと笑みを浮かべた。
目を奪われる。凄い綺麗。

「場所、どこだ?」

ぼーっと見惚れる。

「おい」

と、軽く頬を叩かれた。

「え? 何?」

「何じゃねぇよ。場所はどこかって聞いてるんだ。車で行った方が便利なところだったら、車、出してやるから」
「三蔵、それって……」
「暇だし、嫌でもねぇよ。ったく、ここ二、三日何か言いたそうにしてたのは、それか」

三蔵、気付いてた?

「俺が行かないって答えていたら、俺のことを嫌いになったか?」

思いもかけないことを言われて、驚きのあまり一瞬言葉を失った。

「そんなことないっ! そんな……」
「落ち着け。怒ってねぇから」

そっと頬を手で包まれた。

「こんなことで怒らねぇし、嫌いにもならねぇよ。俺は、お前を手放す気はないんだからな。そんなこともわからないか?」

その言葉に首を横に振った。

わかる。わかるよ。さっき、無意識のうちに抱きしめられたときに、ここにいろって言ってくれたときに。
だから、一緒に行って欲しいって口に出せた。
金蝉に、大丈夫だって伝えたかった。そのときに、この人と一緒だからってちゃんと三蔵を見せたかった。

でも、三蔵に嫌な想いをさせたらどうしようって思ってた。
だから言い出せずにいたけど、それは杞憂だってわかった。
胸の中に暖かい想いが溢れてきた。

本当にこの人に会えて良かった。本当に――。

「大好き、三蔵」

腕を伸ばして抱きついた。