5. その手の温もりを唇で感じたい


そっと手の甲に唇が押し当てられた。

「何だ?」

後ろから抱きしめているので、悟空の表情は見えない。

「手、熱かったから。いつもは冷たいのに。どうしてかなって思って。それに今も熱いのかなって……」

確かめるように唇が手の甲を滑っていく。

「それは、お前に触れてるからだろ。お前の体が熱いから、触れている俺の手にもその熱が伝わる」
「違うよ、逆。三蔵の手が熱いから、触れたところから熱くなるんじゃん」

他愛のない睦言を交わし。
柔らかな茶色の髪に口づけて、離れようとする。

「んっ」

と、悟空が微かに身を竦ませた。

「……そんなに締めつけるな。出て行けないだろうが」

耳元に直接息を吹きかけるように囁けば、悟空の体が小刻みに震えた。

ふっと笑い、締めつけに逆らって出て行こうとしたその瞬間。
まるで食べ物を食むように、指先を口の中に入れられた。
軽く歯を立てられ、舌が這っていく。

「お前、それ、誘っているようにしか見えねぇよ」

と、悟空が手を解放した。

「……だって、足りないから」
「は?」
「三蔵が……足りない……」

ほとんど、消え入りそうな声で呟く。

何を不安に思うのだろう。

いつも。いつまでたっても。
こんな風に近くに引き寄せていても、なお――。

「あ……っ」

悟空が身を反らした。

構わず、もっと近くにと引き寄せる。
もっと近く。
隙間もないくらいに。

「ん……」

切なそうな声を押し殺すかのように、掴まれたままだった手にもう一度唇が押し当てられた。

「やっぱり、三蔵の手……熱い……」

熱を孕んだ甘い声。

「お前の方が熱いだろうが」

お返しのように、目の前にある耳朶を甘噛みする。
途端に悟空の息が乱れ、掴まれた手に力が入る。

何度でも、気のすむまで確かめればいい。
何度でも、気のすむまで与えるから――。