うさぎのぬいぐるみ
「……ん、しょっ」
なんかかけ声が出てしまう。
何枚ものバスタオルを用意して、上から押して、洗い終えたぬいぐるみの水気を切っているところ。
なるべく濡れないようにと抱きかかえていたけれど、結局、雨で濡れてしまったから、洗ってみることにした。
「洗濯機、使った方が早かったんじゃないか?」
と、通りがかりの三蔵から声がかかった。
「それだと、ダメにしちゃいそうで怖いから」
結構乱暴だと思うんだよね、洗濯機。
だから、手洗いにしてみた。
「それにさ、洗濯機だと目ぇ回しそうだし」
「……って、ぬいぐるみ、がか?」
言われて、ぬいぐるみが目を回すなんてことがないのに気づき、赤くなる。
うー。考えなしに言葉にしちゃったよ。
にしても、このぬいぐるみに関しては、結構、三蔵は呆れてるんじゃないかと思う。
小さい子でもあるまいし、大の男がぬいぐるみを可愛がっているなんて。
だけど。
「もう、そいつと一緒にいなくなるんじゃねぇぞ」
赤くなったまま俯いていたら、ふわりと後ろから抱きしめられた。
「三蔵?」
「お前の部屋からそいつが消えているのがわかったとき、心臓が止まるかと思った」
「三蔵」
抱きしめられた腕に手をかけて、顔を埋める。
「大丈夫。もう、どこにもいかない。ずっといる。この子と一緒にずっとここにいる」
もう何があっても離れない。
この手は離さない。
ふと視線のさきにぬいぐるみが映った。
ここにいられて嬉しい。
なんだかそんな風に言って、笑っているような気がした。