写真


机の上に置かれたままだった写真をとりあげた。
これをまた持っていられるのは、嬉しいと思う。

珍しく穏やかな表情を浮かべている三蔵と一緒に写っている写真。

もう一度眺めて、そっとパスケースに戻そうとしたとき。

「これ、いつ撮ったんだ?」

いきなり、背後から写真を取り上げられた。

「三蔵」

取り返そうと手を伸ばすが、ひょいと避けられる。

「三蔵、返して」

また手を伸ばすが、空を切る。
身を躱した三蔵が、取り返されないようにするためか、写真を持った手を上にあげた。

やだ。

途端に、恐怖に襲われた。

だって、このまま返してくれなかったら。
それとも、破り捨てられてしまったら。
こんな写真に覚えはないからと。

三蔵は写真はあまり好きじゃないから―――。

そう考えて胸がズキンと痛んだ。

そう、好きじゃない。
突然、そのことに気がついた。

それを知っているのに、こんな風にこっそりと写真を持っているなんて良くない。

「ごめん……。それ、嫌だったら――」

一度はもうないもの、と思ったものだから。
大丈夫。諦められる。

「お前、な……」

ふぅっと溜息をついて、三蔵が腕を下ろし、写真を返してくれた。

「こんな写真なんかより、俺がここにいるだろうが」

その言葉に、返してもらった写真と、目の前の三蔵を交互に見つめる。

そうか。
写真じゃなくて、いつでも本物の三蔵がそばにいてくれるんだ。

「三蔵……」

腕を伸ばして捕まえた。
ホントにここにいることを確かめるために。

そして。
その存在の確かさに、嬉しくて笑みを浮かべた。