1. 隣に座っていい?
「三蔵、コーヒー、ここ置くね」
ソファーに座って新聞を読んでいる三蔵に声をかける。
「あぁ」
新聞から目を離さずに三蔵が答える。
が、しばらくして、どうしようか迷っている俺に気づいたのか、三蔵が顔をあげた。
「……どうした?」
「ん……えっと、ね」
なんとなく手に持ったコーヒーを見て。
「隣に座っていい?」
と聞いてみた。
バサリと新聞をたたむ音が聞こえてくる。
「好きにすればいいだろ。ここはお前の家なんだから、遠慮することはない」
「うんっ!」
コーヒーに手を伸ばしながらいう三蔵の隣にさっそく腰かける。
並んでコーヒーを飲むのって、なんか幸せかも。
くふふ、と忍び笑いがもれる。
と。
「ヘンなやつ」
そういって、三蔵がまた新聞をとりあげた。
むぅ、と思うが、ほんのちょっと寄りかかってみても、三蔵はなにも言わず、避けもせず。
なんだかまた嬉しくなって、また笑いそうになって、ごまかすためにコーヒーを一口飲んだ。