ずっと一緒


「あれ? 三蔵?」

久しぶりに、ナタクと李厘に会って、映画を見に行った帰り。
お茶しようということになり、なぜかわざわざ八戒の喫茶店に行ってそのまま居座っていたところ、三蔵が姿を現した。
なんか外で偶然会えるって嬉しいな、と思う。
いや、八戒の店だったら会える確率は高いんだろうけど、今日、ココに寄ったのは予定外のことで、三蔵は知らなかったから、偶然は偶然だと思う。
気を使ったのか、カウンターに座る三蔵のところに、ちょっとナタクと李厘に目で合図してから、とてとてと向かう。

「三蔵、学校は?」

確か今日は大学院の方の用事で出かけるって言ってたはずだけど。

「用はすんだ」
「そっか。じゃ、夕飯、一緒に食べられる?」
「あぁ」
「わかった」

それだけ聞いてまた席にと戻る。

「な、悟空。そういえば二人の馴れ初めってなんだったんだ?」

椅子を引いたところで、突然、李厘が聞いてきた。
馴れ初め?
ちょっと考えて。

「えぇっと……。三蔵のナンパ?」

ガチャン。
答えると、背後でカップが乱暴に置かれた音がした。

「間違ってはないと思うけど……」

眉間に皺を寄せている三蔵の方をちらりと振り返り、それから思い出そうとしてちょっと上を見上げる。
だって公園で会って、そのあと。

「来るか? って誘ったの、三蔵じゃん」
「へぇ。三蔵さまがナンパね。珍しいことを聞いた」

同じくカウンターにいた悟浄が面白そうな声をあげる。

「珍しいというより、初めてなんじゃないですか?」

八戒も話に乗ってきた。

「ちゃんとできたのかよ、ナンパ」
「できたから悟空がここにいるんじゃないですか。あなたよりも成功率は高いってことですね。あ、でも、一度逃げられてますね」
「え? そうなの?」

李厘が興味津津といった声をあげた。
と。

「三蔵、もう帰るんですか? まだコーヒー、半分以上残ってますよ」

ガタン、と椅子の引かれる音がして、三蔵が出口に向かうのが見えた。

「……怒らせちゃった?」

肩をすくめて李厘が言う。

「ううん。大丈夫。からかわれるのが嫌だっただけ。あとで李厘のフォローはしとくから」
「俺らは?」
「悟浄と八戒はいまさらでしょ」

確かに、と二人は苦笑を浮かべる。

「それにしても強くなりましたね、悟空。前なら、泣きそうな顔で追いかけてるところですが」
「……泣きそうは余計だと思う」

確かに、前だったら追いかけてるかもしれないけど。

「いまは大丈夫だってわかったから」

前はいつか三蔵と離れることになると思っていたから。
少しでも一緒にいたくて、なにかあるとすぐに三蔵の後を追った。

でも、いまは。
いまは大丈夫。

「なにがあっても一緒だから」

そう言って、笑ってみせた。