Addiction(58)
火照る体。あがってしまった息を整えていると後ろから柔らかく抱きこまれた。
なんだかこうしていると、すごく安心。
体の芯から解れていくような、そんな感じになる。
そっと目の前で組まれている手に手を重ねた。
指を1本1本持ち上げて外していき、片手をとる。
じっとみつめて。
それから、手の形を確かめるように親指からずっとその外側をゆっくりと辿っていっていると。
「……なにがしたいんだ」
呆れたような声が頭の上から降ってきた。
「んー。別になにがしたいってわけじゃないんだけど……。ただ綺麗だな、って思って」
綺麗な手。
綺麗な人は、細かいパーツの1つ1つまで綺麗なんだろうか。
そんなことを思う。
で、目の前までその綺麗な指を持ってきて。
かぷり、と噛みついた。
「足りねぇならそういえ」
掴んでない方の手でくしゃりと髪をかき混ぜられる。
「違うもん……って」
指から口を離したところで、頬に手をかけられて、顔だけ三蔵の方に向かされる。
――綺麗。
そう思ったところで唇を塞がれた。
「ん……っ」
探るような舌に、ゾクゾクとした甘い震えが走る。
「……ん……ぞ」
より近くにと抱きしめられ、触れる素肌が心地よい。
と、唇が離れ、今度は柔らかなキスが目の上に落ちてきた。
優しく触れていくキスは大事にされているようでなんか嬉しい。
くすくすと笑いがこみ上げてくる。
そんななかで。
「不思議だね」
「なにが」
羽のようなキスをたくさんくれながら三蔵が問いかけてくる。
「もう1年もたつんだ」
三蔵と初めて会ってから。
「……最初は、サイアクだった」
そういうと、むっとしたように三蔵の動きが止まった。
「だっていきなり、無理やりだったし」
むっとするのはこっちの方だって思って、ぷぅと頬を膨らます。
と、唐突に三蔵の指が頬をつついてきた。
「もう、なんだよ」
怒ってるのに、とますます膨れると、クスリと笑う声がした。
それと同時に頬に唇が触れる。
機嫌を直せ、というように。
「……やっぱり不思議」
ただそれだけのことで簡単に怒りは溶け、なんだか幸せな気分になってしまう。
「こんな風になるなんて、思わなかった、な」
体の向きを変えてふわりと抱きついた。
そして見つめてくる紫暗の瞳に、大好き、と小さく呟いた。
【ひとまず完】