後瀬 (5)


で、結局、痛かったのだけど。
ま、でも、なんだろ。
三蔵が気遣ってくれているんだって思ったら、ちょっとくらいの――ホントはちょっとじゃないけど的な痛みも我慢できる――ような気がする。

そのうち慣れるって言われたんだけど、そのうちって――どのくらいかかるんだろ。
なんか散々、爪を立てちゃったような気がするけど。
本職がモデルじゃないって言ってたから大丈夫――だよね。

そんなこんなで眠りについて。
ふと目を開けると。
まだ暗かった。

窓の外も暗いみたいで、まだ夜も明けてないみたいだった。
ちょっと喉が渇いたかも――?
そぉっと三蔵の腕のなかから抜け出す。

で、初めて気づいた。
抱きしめられて寝ていたことに。

前回は目が覚めたときに三蔵はいなかった。
けど、もしかしてこんな風に寝ていたのだろうか。
こんな風に寝るのは初めてなのに――隣に人がいるっていうのだけでも初めてなのに、全然気にならなかった。

不思議だ。
ずっとこうしてきたみたい。
一緒に寝る……っていうか、そういうことをするのは、まだ2回目だっていうのに。

なんだろ。
なんだか温かなものが胸に溢れてきて、なんとなく笑みを浮かべながらベッドから降りようとしたところ。

「え?」

腕を引っ張られた。
反動で三蔵の方に倒れ込んでしまう。

なになに? なにが起こったんだ?

よくわからなくて、きょろきょろと視線を走らせてると、綺麗な顔が目に入った。
暗いけど暗闇に目が慣れたせいか、割とよく見える。

眠ってる――みたい。
なんだけど、じゃあ、さっきのはなんだ?
寝たふりをしているようにも見えない。

もぞもぞと動いて、楽な姿勢になるようにする。
と、抱きしめ直されて――ふと気づいてしまった。

眉間の皺が消えてる。
寝息も穏やかになったような気がする。

もしかして俺と一緒にいることで――?

さっきと一緒。
温かなものが溢れてくる。

「おやすみ、三蔵」

小さく呟いて、幸せな気分に浸りながら目を閉じた。