祈りにも似た声無き叫び(Epilogue)
憎めばいいと思う。
強く。強く――。
そうすることで、あのときの強い光を取り戻すのならば。
あれが虚構の世界だと、一番よくわかっていたのは他ならぬ自分。
それでもそばにいたいと望んだ。
初めて望んだ金色の光。
強い強い光。
あの時。
最初に会ったあの時。
差し伸べた手を少年は振り払ったのだ。
怯えるわけでもなく、泣き出すわけでもなく。
目に強い光を浮かべて。
驚いた。
この存在をありのままにその目に映す人間がいることに。
強い精神力。強い光。
でも、記憶を操作することによって、その輝きは封じ込められた。
何もかも諦めたように、ただ流されるように日々を過ごす姿。
それが本当の姿ではないと、わかっていた。
それでも、名前を呼んでくれるのは嬉しかった。
その腕の中にいられるのは心地良かった。
いつか終わることと知っていたけれど。
あの強い光を完全に封じ込めることはできないのだから。
憎めばいい。
強く、なにものにも代えがたく強く。
その強い心で。
そして、いつか目の前に現れること。
それを願っている。
この長すぎる生を終わらせてくれるのが、あの人だったらいいと。
それだけを希っている。
三蔵――。
目を閉じて、その名だけを呼ぶ。
もとより答えなどなく、見守るのは月の光だけ。
三蔵――。
それは祈りにも似た、声無き叫び。