祈りにも似た声無き叫び(Epilogue)



憎めばいいと思う。
強く。強く――。

そうすることで、あのときの強い光を取り戻すのならば。

あれが虚構の世界だと、一番よくわかっていたのは他ならぬ自分。
それでもそばにいたいと望んだ。
初めて望んだ金色の光。
強い強い光。

あの時。
最初に会ったあの時。
差し伸べた手を少年は振り払ったのだ。
怯えるわけでもなく、泣き出すわけでもなく。
目に強い光を浮かべて。

驚いた。
この存在をありのままにその目に映す人間がいることに。

強い精神力。強い光。

でも、記憶を操作することによって、その輝きは封じ込められた。
何もかも諦めたように、ただ流されるように日々を過ごす姿。
それが本当の姿ではないと、わかっていた。
それでも、名前を呼んでくれるのは嬉しかった。
その腕の中にいられるのは心地良かった。
いつか終わることと知っていたけれど。
あの強い光を完全に封じ込めることはできないのだから。

憎めばいい。
強く、なにものにも代えがたく強く。
その強い心で。

そして、いつか目の前に現れること。
それを願っている。
この長すぎる生を終わらせてくれるのが、あの人だったらいいと。
それだけを希っている。

三蔵――。

目を閉じて、その名だけを呼ぶ。
もとより答えなどなく、見守るのは月の光だけ。


三蔵――。



それは祈りにも似た、声無き叫び。



最後までお読みいただきありがとうございます。
このお話は、なおさまからの9999番のキリリクです。なおさまからのリクエストは
「裏切ることも、時には愛情」
でした。
なんというか、あまりに綺麗で切ないリクエストに思いのほか時間がかかり、思いのほか長いものになりました。そのうえいろんなものの説明をかなり飛ばし、まるで続きがあるかのような終わり方をしてます。……すみません。続き、ありません、今のところは。
ただ悟空と三蔵の再会のシーンとラストシーンは頭にあるので、いつか書けたらいいな、と思います。…っていつ?
リクエストの内容と微妙に違っているような気がするうえに、中途半端でごめんなさい。でも、これが精一杯。お許しくださいませ。
気に入っていただけるかわかりませんが、なおさまに捧げます。キリリク、ありがとうございました。

まりえ 拝