【パラレル(SSオリジナル(江空?)】
メール
2006年12月18日
「だから、悪かったって」
電話に向かって謝る。
だけど。
その向こうにいるはずの、年下の恋人は、うんともすんとも言わない。
「ホント悪いと思ってる」
こんな風に拗ねてしまったのは、送られてきたメールに気づかなかったため。
その時間はちょうど客先を回ってて電話を切ってて、そのまま夜まで電源を入れるのを忘れてた。
しかもタイミングが悪いことに、今日は隣の課の忘年会に連れて行かれて。出席予定だった人が風邪にやられて3人も来れなくなっちゃったとかで。
で、今はもう真夜中近く。
「ごめん、な」
パタン、と携帯を閉じる。
そして、目の前の扉をパタンと開ける。
真っ暗な部屋のなか。
月明かりに照らされて、金の髪が輝いていた。
綺麗。
凄く、綺麗。
携帯を耳にあてたまま、驚いた表情でこちらを見ている、その綺麗な影に近づいていった。
「……てめぇ、ヒトん家に不法侵入」
「光明がくれた」
鍵をかざして見せる。
それから。
「ホント、ごめん」
呟いて、目の前の肩に額を押しつけた。
沈黙が降りる。
が。
「……お前、冗談じゃねぇとか思わないのか?」
「なにが?」
「働いてるのに――忙しいのに、邪魔するな、とか」
「思うわけないじゃん」
即座に否定すると、微かに震えが走った。
それから、ぎゅっと抱きしめられる。
不安なのかな、と思う。
年の差とか。
社会人と学生の立場の差とか。
でも。
「大好きだよ。それだけは信じろよ、な」
囁くと、ますます強く抱きしめられた。