【パラレル(先生×生徒)】 * 注意
先生の手


2006年12月15日


「や……せんせ……も……ぅっ」

 身を捩って、離れようとする。
 でも、巧みに押さえ込まれていて、身動きができない。

「……だ……め……っ!」

 もう限界。
 焼ききれるんじゃないかというくらいの感覚が体を突き抜けていく。

「……早かったな」

 力なく横たわり、全身で息をするようにしていたら、そんな声が聞こえてきた。
 頬に熱が宿る。

「それにちょっと濃いんじゃないか?」

 見せつけるように先生が手をあげる。

「や……っ」

 思わず顔をそむける。
 恥かしくて、体中の血が逆流しそう。

「自分でしてなかったのか?」

 そのうえそんなことまで言われて、体が震えてくる。
 と、足を持ち上げられた。
 それはひどく無防備な、恥かしい格好。
 思わず逃げ出したくなるけど、これは自分が望んだことだから。
 ぎゅっと目を瞑った。

「力、抜けよ」

 耳元で声がする。
 つっと、触れる感触。
 その感触に初めてのときの痛みを思い出し、緊張して力を抜くどころじゃなくなる。

「それじゃ、辛いだけだ。わかっているだろ?」

 優しい囁きとともに、目の上にキスが降りてくる。
 思わずほっとしたところに、別の刺激が湧き上がる。

「……んっ、やっ」
「いや、じゃないだろ? こんなに反応がいいんだから」

 微かに笑いを含んだ声。

「あ……っ」

 気が逸れている隙を狙うように、先生の指が内にと入り込んでくる。
 途端に襲ってくる、違和感。

「ふ……あぁぁ」

 でも、もう一方の方の感覚の方が強くて、思わず声が漏れる。

「本当に反応がいいな。この一週間、全然、自分でしてなかったのか?」

 耳に息を吹き込むように、熱い吐息とともに先生が囁きかけてくる。
 ゾクゾクと、背中を甘い痺れが走り抜けていく。

「だって、手……」
「手?」
「先生……の手……思い出しちゃって」

 しようと思わなかったわけじゃない。
 だけど、そんな気分になるたびに、思い出すのは先生の手で。
 その手の感触で。
 それを思い出すと、なんだか身も世もないような気分になって。

「……できなかった」

 呟くと、一瞬、先生の動きが止まった。
 それから、柔らかく唇を塞がれた。
 だけど、優しく触れてきたのは最初だけで、キスはすぐに貪るような激しいものにと変わる。
 いきなりのことで、ついていけない。
 ただ翻弄されるがまま。
 ようやくキスから解放されると、なんだか酸欠も加味されて、体から力が抜け落ちた。

「……ったく、あんまり可愛いことを言うなよ。本気で止められなくなるぞ」

 上から声が降ってくる。
 可愛い――?
 いったい、何が。
 不思議に思っているのが、顔に出ていたのだろう。
 先生がクスリと笑い声をたてた。

「もっと忘れなくしてやるから、覚悟しろよ?」

 触れられる手に、かすむ理性。
 そのなかで最後に見たのは、意地悪そうな、だけど綺麗な先生の笑み――。


(memo)
 前日の続き。前日と合わせてテーマは「1回目は勢いだけど、2回目は勇気がいる」と「先生の手を思い出してできなかった」