【原作設定】
すべてを手に入れるためなら


2008年11月28日


「う、わぁっ」

急に引っ張りあげられた。

「やあぁっ」

三蔵のうえに乗り上げる形になって、腰から下に痺れのようなものが走る。
それは甘い疼きとなって、そこに留まり続ける。
解放されない限りは。

「……っ」

声を押し殺して、でも、震えながら思わず三蔵に縋りつく。
と。

「好きにすればいい」

耳元で三蔵の囁き声がした。

「ふ、あっ」

軽く揺すりあげられる。
好きにしろといっておいて。

「や、めっ」

思わず背中に爪をたてたところで、ようやく動きが止まる。
けれど、甘い疼きは消えはしない。

「どうした?」

面白がってでもいるような声。
呼吸を整え、顔をあげて、きっと睨みつけた。

「三蔵のこと、好きだけど、でも、だからといって俺を好きに扱っていいってわけじゃない」
「あぁ。それはさっき聞いた」

笑みが浮かぶ。
ひどく鮮やかで、綺麗で、蠱惑的な笑みが。

「だから、お前の好きにすればいいといっている」

そして甘い囁きとともに、軽く目のうえに唇が触れてくる。

「結局、俺はお前には逆らえねぇんだから。なにひとつ、な」

もう一度、今度は反対の目に唇が降りてくる。
このうえもなく優しく。

狡い。

こんな、他のだれにも見せないような笑みを見せて。
普段は絶対に言いそうにないことを言うなんて。

――逆らえないのは、俺の方なのに。

だけど。
それを口に出したら負けのような気がして。
睨みつけたまま、そっと唇を重ね。

そして――





微笑みも、言葉も、すべてを手に入れるためならば。
プライドさえも塵のようなものだろう。