「う、わぁっ」
急に引っ張りあげられた。
「やあぁっ」
三蔵のうえに乗り上げる形になって、腰から下に痺れのようなものが走る。
それは甘い疼きとなって、そこに留まり続ける。
解放されない限りは。
「……っ」
声を押し殺して、でも、震えながら思わず三蔵に縋りつく。
と。
「好きにすればいい」
耳元で三蔵の囁き声がした。
「ふ、あっ」
軽く揺すりあげられる。
好きにしろといっておいて。
「や、めっ」
思わず背中に爪をたてたところで、ようやく動きが止まる。
けれど、甘い疼きは消えはしない。
「どうした?」
面白がってでもいるような声。
呼吸を整え、顔をあげて、きっと睨みつけた。
「三蔵のこと、好きだけど、でも、だからといって俺を好きに扱っていいってわけじゃない」
「あぁ。それはさっき聞いた」
笑みが浮かぶ。
ひどく鮮やかで、綺麗で、蠱惑的な笑みが。
「だから、お前の好きにすればいいといっている」
そして甘い囁きとともに、軽く目のうえに唇が触れてくる。
「結局、俺はお前には逆らえねぇんだから。なにひとつ、な」
もう一度、今度は反対の目に唇が降りてくる。
このうえもなく優しく。
狡い。
こんな、他のだれにも見せないような笑みを見せて。
普段は絶対に言いそうにないことを言うなんて。
――逆らえないのは、俺の方なのに。
だけど。
それを口に出したら負けのような気がして。
睨みつけたまま、そっと唇を重ね。
そして――
微笑みも、言葉も、すべてを手に入れるためならば。
プライドさえも塵のようなものだろう。