Are you ready?


街灯と街灯の間。
闇に沈む暗い場所に、仄かな光が見える。
そこを目指して、悟空は駆けていた。

「三蔵、お待たせ」

光は煙草の火。
悟空がそばにくると、壁にもたれかかるようにして煙草をふかしていた三蔵は身を起こした。

「遅い」

そして不機嫌そうに一声告げる。

「しょーがねぇだろ。すっげぇわかりずらいトコにあったんだから」
「で?」
「だれに聞いてるわけ? もちろん抜かりはなし」

悟空は小さなディスクを目の前に掲げて見せた。

「けど」

ちらりと後ろを見る。

「……の、バカ猿。抜かりはあるじゃねぇかよ」

悟空の視線を辿った三蔵は、小さく舌打をする。

バタバタと、遠く、けれど確実に足音が迫ってきていた。

「だからしょーがねぇだろって。も、全然、前情報がなかったんだから」
「自分の失敗を人のせいにしてるんじゃねぇよ。だいたい、お前、俺が現場にいるときに限ってドジってねぇか?」
「んなことねぇもん。それにこれは取ってきたんだし、捕まりもしなかったんだから、ドジったわけじゃねぇだろ」
「こっから無事に逃げられれば、な」
「よっゆー」

台詞の後ろに『♪』がつきそうな感じで悟空は言う。
三蔵は溜息をひとつつくと、悟空の手からディスクを奪い取り、それから自分が持っていたものを渡した。
普通のモバイルパソコンよりもさらに小さなパソコン。

「落とすなよ」
「なに、それ。自分だけ軽いモン、持とうだなんて、ずりぃっ」
「それのなかになにが入っていると思ってる」
「メシの種」
「食うのは?」
「俺」
「そういうことだ」
そうか、と悟空は納得しかけ。
「って、ちょっと待て。よくわかんねぇって、それ」
「猿頭だからだろ」
「それは答えじゃねぇっ」

掛け合いをしているうちにも足音はどんどんと近づいてくる。

「もう、三蔵がケチつけるから、逃げる機会を失っちゃったじゃねぇか」
「逃げる気もねぇくせに」

三蔵の言葉に、にやりと悟空は笑う。

「じゃ、行きますか」

ふたりは迎え撃つ体勢で、すっと並び立った。





――Are You Ready?