To Know Him is to Love Him (3)
翌日。三蔵に車を出してもらって、金蝉のお墓のある寺にやってきた。
よく晴れた気持ちの良い日で、周囲の緑が目に心地良かった。
そう思えるのはたぶん、三蔵と一緒だから。前に来たときは悲しくて辛くて、周囲のことなど全然目に入っていなかった。
「三蔵」
隣に並んで歩く三蔵の手を握ると、ぎゅっと握り返してくれた。それだけで凄く嬉しくなる。
幸せだと思う。
眩暈がするくらい幸せだと。
「ここ」
小さなお墓の前で足を止める。
これは象徴みたいなものだけど。ここに金蝉がいるとは思わないけど。
でも、ちゃんと見てくれているといいと思う。
俺は大丈夫だよ。いつまでも泣いてないよ。
この人に会えた。この優しい人に。だから、安心してね、金蝉。
持ってきた花と線香を供える。そして、振り返って三蔵を見た。
あぁ、やっぱり綺麗だって思う。それに、こちらを見る目はとても優しい。
手を伸ばそうと思ったその時――。
「悟空っ!」
いきなり体を後ろに引かれた。そして、羽交い絞めにされる。
「なっ!」
「心配した」
何をするとわめこうと思ったが、聞こえてきた声が覚えのあるもので動きを止めた。
「焔?」
振り返ると、互い違いの色をした瞳が目に入った。
「なんで? イギリスじゃ……」
「無理矢理帰ってきた。お前なぁ、いきなり連絡取れなくなってるんじゃない。どれだけ心配したと思ってるんだ」
改めて抱きしめられる。って――。
「ちょっと、焔、離して」
逃れようと身を捩った。だが、焔はますます手の力を込めて離してくれない。
「離さない。ったく、こんなことなら無理矢理にでも連れて行けば良かった。お前が大丈夫だって言うから日本に残したのに。携帯は繋がらないわ、帰ると言ってた施設には戻ってないわ、学校にも登校してきてないって言うわ。本当に心配したんだぞ」
「……なんで? なんで、連絡をとろうとなんか……」
「心配してたからに決まっているだろうが。金蝉が死んで、お前、かなり落ち込んでいるはずなのに、泣きもしないで……。本当に心配してたんだぞ」
片手が顎にかかった。顔が近づいてくる。
「やっ!」
反射的に押し返そうとした手を掴まれた。そして。