Don't You Want Me Any More? (2)


好きな人がいる――。

決死の告白に、返ってきたのは沈黙。

「えぇっと、ごめん。驚かしちゃったかな。でも――」
「あ、いや、驚いたっていうか」
突然すぎたかなと思って、わたわたと言い募ろうとしたところ、ナタクに遮られた。

「それは、知ってる」
「は?」
「だってお前、バレンタインデーのときに『好きな人がいるから』ってチョコ、受け取らなかったんだろ?」
「なんで、それを」

バレンタインデーの週が受験日っていう大学は結構多くて、ただでさえ短縮授業だったし、あの週はナタクとは顔を合わせてなかったんだけど。

「お前の好きな人が誰かって俺のトコに聞きにくる子が結構いて。お前が教えてくれないからって」

……確かに言わなかったけど、なんでわざわざナタクのところに。
「俺がその好きな人だと勘違いしてる輩もいたけど。バレンタインデーが終わった後だけど、お前、チョコくれたから。好きな人ってあなただったんですか、って」
「だって、それはだいぶ前からあげてるじゃん。習慣みたいなもんだろ? もちろん、毎回感謝の気持ちは入ってますケド」

バレンタインデーにチョコをあげるのが『特別に』好きな人、ってのを知らなかった頃からの話。
でも、ナタクは初めてできた友達だから、『特別』は『特別』だ。
「あぁ。だから、そっちの誤解は正しといた。でも、それがなかったとしても、最近、よく誰かと出かけてるみたいだし、それに、お前、文化祭のときにお揃いで携帯ストラップを作ってもらってただろ? だから、そうじゃないかとは思ってた」
「……そっか」
「そう。って、わかってないと思ってたのか?」
「んと、正直に言うと半々くらい」
「そうか。ま、俺から聞いても良かったんだけど、なんか秘密にしときたいみたいだったから」
「秘密っていうか……」

ちょっと呼吸を整える。
意を決して。
「あのね。その人、男の人なんだ」

沈黙が降りる。

それはさっきよりもなんだか重い気がした。