Don't You Want Me Any More? (3)


「……ごめん。気分を害したなら消えるから――」
「ちょっと、待て」

沈黙を破り、伝票を掴んで立ち上がろうとしたところ、ナタクに呼び止められた。

「違う。そういうんじゃなくて、ただ、ちょっと……びっくりしただけだよ」

そこでナタクはふっと笑みを浮かべた。その笑みはいつものナタクの笑みで。
安心した。

「お前、それで俺に言わなかったのか?」
「うん。受験生なのに動揺させちゃ、マズイかなって思って。それに親父さんと揉めてたろ? 心配かけるのもなんだなって」

受験する大学のことで、ナタクは父親と対立してた。
父親は、どうせ会社を継ぐのだから事業に役に立つところにしろと言い、ナタクは大学くらいは自分の好きな学問をしたいと言い。
結局、父親が折れた。
が、ナタクの方も歩み寄り、こうして春休みの間は父親の会社の手伝いをしてる。

「別に心配なんかしないさ。お前が選んだ人ならな。男でも女でも関係ないよ」

ナタクが本心からそう言ってくれてるのがわかる。

「やっぱ、ナタクは凄いな」
「は?」
「話してると元気になる」

初めて会ったとき、『スゲェ』って言ってくれたのを思い出す。

この金瞳。
普通の人とは違う、異質なもの。

敬遠されていたのに、ナタクだけがそう言ってくれた。
そしてそのおかげで、今の俺がある。

「で、どんな人なんだ?」

ナタクが聞いてくる。

「今度、紹介するよ。凄く、ね。凄く――」

脳裏に三蔵の姿が浮かぶ。

「綺麗な人だよ」
「……早速、ノロケかよ」

その言葉に、てへっと笑う。
それから紅茶に手をのばそうとして、ふと、目の端に輝く金色が映った。
反射的にそちらを見る。

視線の先に――。
三蔵がいた。

なんで?
と思ったのは、ここに三蔵がいたからだけではない。
三蔵は綺麗な女性と一緒だった。