Don't You Want Me Any More? (25)


柔らかな光が部屋に満ちていた。
静かな、何の音も聞こえてこない朝。

ふっと目を開けて、いつもとは違う光景に違和感を覚えた。
知らない部屋、というわけではない。ここは俺の部屋だ。だけど、なんで俺の部屋に?
昨日。昨日は――。

「目が覚めたか?」

隣で三蔵の声がした。
既に身を起こしている。
もうだいぶ前から目を覚ましていたようだった。

「三蔵……」

昨日、あまりにいろんなことが起こりすぎて、混乱している。
最後に覚えているのは、お風呂を出た後で。
三蔵に体を拭いてもらって、それから――。
それから、どうしたんだろう。

考えるのに、部屋を見回す。
と、机の前の椅子に、うさぎのぬいぐるみがちょこんと座っているのが目に入った。
バスタオルにくるまれて、顔だけ出てる。

「三蔵、あれ、三蔵が?」
「あぁ。あとでちゃんと乾かしてやらないと、な。お前のお気に入りだろ?」

その言葉に嬉しくなった。
笑みを浮かべながら、起き上がった。

「ね、三蔵、昨日、お風呂から出て、その後どうしたんだっけ? なんで、こっちの部屋で寝てるの?」

一緒に寝るときは、三蔵の部屋のベッドを使う。
というか。
ほとんど、こっちの部屋では寝ないので、なんだかやっぱり変な感じがする。

「昨日、雨が降っていただろう。濡れたままだったからな……」

三蔵が言わんとしていることがわかって、赤くなる。濡れたまま、ベッドで――。

「風呂から出た後、お前、ほとんど寝ててな、こっちに運んだ。泣き疲れたんだろ」

引き寄せられて、目蓋の上にキスを落とされた。

「まだ少し腫れてる。せっかく綺麗なのに……」
「綺麗……?」

思いもかけない言葉に驚く。

「あぁ。金色で綺麗じゃないか。ずっと、そう思っていた」
「そんな、だって、だって、この目――」
「前に言われたことは忘れろ。珍しい色をした綺麗な目。それでいいだろう?」

ぎゅっと抱きしめられる。

「だから、もう離れるな」
「三蔵」

離れない。
ずっと。
ずっと、一緒にいるんだ、この人と。

「うん。もう二度と離れない」

そう囁いて、そして。

誓いのようにキスを交わした。

【完】