Don't You Want Me Any More? (24)
「さんぞ」
大きく息をついて、三蔵にと身を委ねた。
途端に大きくお湯が揺れて、バスタブから溢れ出る。
バスタブは二人で入るには少し狭いような気もするけど、でも、ぴったりとくっついていられて、安心する。
「大丈夫か?」
後ろから手が伸びてきて、抱きかかえられた。
「平気」
その手に手を重ね合わせる。
「……悪かった」
三蔵が謝ってきた。
「ううん、いい」
滅多にないことに、クスリと笑って答える。
マンションに戻ってくるなり、性急に抱き合った。
三蔵はいつもより余裕がないように思えた。いつもならば丹念に準備をしてくれるのに、ほとんど何もしないままで受け入れさせられた。
でも結局、そんな酷いことにはならなかったけど。
「一刻も早くお前を感じたかった――」
頭の上にキスを落とされた。
「俺も三蔵を感じたかったから、いいよ」
そう答えると、微かに笑う声がして、また頭の上にキスを落とされた。
「そういえば、お前、李家の跡取りを知っているのか?」
なんだかくすぐったいような、嬉しいような、そんなふわふわした気持ちになって、さらに三蔵によりかかったところ、突然、三蔵がそんなことを言い出した。
「李家……? あ、ナタク?」
「そんな名前だったか。すごい勢いで噛みつかれたぞ。悟空を泣かせるな、と」
「え……?」
「ちょうど、焔から電話がかかってきたところにいてな。俺の携帯を見て、あなたが悟空の恋人ですか、と聞いてきた。お揃いの携帯ストラップをしているから、と。それから一緒にライブに行くはずだったのに来なかった、泣いてたみたいだったと言われた。お前を泣かせるやつは許さない、と怒っていた。俺がお前のためにならない人間だったら全力で遠ざけると言って、な」
「ナタクが……」
「お前、自分が人を不幸にすると言ってたが、そんなことはないだろう。あの少年は、自分が今あるのはお前のおかげだと言っていたぞ。それに、八戒も悟浄も少なからずお前がいることで救われている。もちろん、俺もな」
そっと、またキスを落とされた。
「お前がここにいてくれて良かった」
その言葉に、突然、涙が零れ落ちた。
だけど、悲しいからではなく。
言葉もなく、ただ優しい手に身を委ねた。