3. 月が嫉妬する程の口付けを
帰り道。公園を通り抜けようとしたところ、悟空がいるのに気がついた。
暗い夜の公園に佇み、煌々と光を投げつける月を見上げ、手を差し伸べていた。
今夜は満月。
明るい月の光に照らされた悟空は、まるで少年の彫像のようで。
――綺麗だった。
「悟空」
呼びかけると、顔をこちらに向けた。月と同じ色の、金色の瞳。
あまりにも神秘的で一瞬、息がとまった。
まるで容易く手にしてはいけないような、そんな雰囲気を醸し出していた。
「あれ、三蔵?」
だが、ちょっと驚いたような顔を見せると、神秘的な雰囲気はかき消えた。
「今日は遅くなるって言ってなかった?」
「……もう充分遅ぇよ」
午前0時はまわっているはずだ。
「え? そうなの?」
「何をしてた?」
聞くと、笑みが浮かんだ。
「部屋から月を見てたら、なんか綺麗だったから、外に出てみようかなって。外の方が月の光をたくさん浴びれるような気がして……」
「誘われてるんじゃねぇよ」
抱き寄せて腕の中に閉じ込めた。
コレは俺のモノだ。
月を睨みつけた。
「さんぞ?」
驚いたように顔をあげる悟空の唇を塞いだ。
ゆっくりと掻き回すように悟空の口腔を味わい、舐るように舌を絡める。
「んっ……さんぞ……」
うまく息ができないのだろう。
苦しそうに服を引いた悟空のために、少し唇を離してやると、切なげな声で名前を呼ばれた。
そう。
そうやって、俺の名前だけ呼んでいればいい。
さらに深く口づけた。
まるで見せつけるかのように、甘く、激しく。
徐々に、あたりの闇が深まっていく。
密やかに響く互いの吐息と、口づける度に起こる水音。
唇を離し、絡めた舌も離れていくと、透明な雫が落ちていく。
濡れたように光る唇に舌を這わせようとしたところ、ぼぉっと目を開けた悟空が呟いた。
「さんぞ……月が……」
その言葉に、ふと顔をあげて空を見た。
月が雲に隠れていた。
知らず知らずのうちに唇の端があがった。
「月なんか見てるんじゃねぇ」
囁いて、また唇を塞いだ。