Addiction(4)


なんだろ。
体が重い。起きれない。腕を持ち上げることさえできない。
昨日、ちょっとヘンだなって思ってたけど。
もしかして風邪かなって思ったけど、こんな酷くなるとは思ってなかった。

動けない。

これってもしかしたら、かなりヤバイ状況じゃないのだろうか。
このまま誰も見つけてくれなかったら――。

そんなことを考えているうちに、意識が途切れた。




そして次に目が覚めたとき、目の前にいたのは八戒だった。

「……あれ?」
「あれじゃないですよ、もう。気がついてよかった」
「ここ、教会? なんで、俺……」

ウチにいたはずなのに。

「あの方が運んできたんですよ。血相変えて。どっちかっていうとあの方のが病人みたいでした」
「三蔵が?」
「えぇ。それより、悟空。いつも言ってるじゃないですか。一人暮らしなんだから、具合が悪いと思ったらすぐに連絡しろって。それを、こんなに酷くなるまで放っておくなんて。下手したら本当に危ないんですからね」
「あ……うん。ごめんなさい」

ふっ、と八戒がため息をついた。

「……連絡しなかったのは、ここにあの方がいるからですか?」

言葉を失う。
三蔵と喧嘩をしたのだ。で、三蔵は教会にいると言って、出て行った。

「そんなにあの方が嫌いですか?」
「違うっ」

思いもよらぬ質問を思いっきり力強く否定する。突然だったから、考える間もなく感じたまま。
それに気付いて、ちょっと顔を顰める。

「そうですか。良かった」

柔らかな笑みを浮かべ、八戒が廊下にと続くドアを開けた。
そこに立っていたのは――三蔵。

「僕はやることがあるので、しばらく様子を見ててあげてくださいね」

そう三蔵に声をかけて、八戒が部屋から出て行く。
入れ替わりにそばに寄ってきた三蔵はベッドの横に跪くと、無言で俺の手をとった。それを額に押しつける。

「……三蔵?」

まるで祈るかのように、そのままの姿勢で動かない三蔵に声をかける。

「良かった」

と、ただ一言だけ、小さな呟き声が返ってきた。
それを聞いて。
もういいか、と思った。
喧嘩したこととか、全部。なにもかも。三蔵の存在も。

「三蔵」

もう一度呼びかけて少し身を起こし、泣いているみたいにみえる三蔵の頭をもう一方の手で撫でる。
初めて自分から触れた金色の髪はキラキラとしていて、すごく綺麗だと思った。