Addiction(5)


「さっさとしろ」

髪を乾かし終わってドライヤーを片づけたところで、すぐに声がかかった。
うー。
なんか、や……。
いや、嫌ってわけじゃないんだけど。
そんな風に躊躇してたら、電気が消されて強引に布団に引っ張り込まれた。

「まだ治りかけなんだから、体を冷やすな」

両腕で包み込まれる。

「……なこといったって、三蔵のが体温、低いじゃんか」

ぼそりと呟く声は自分でも拗ねるようだと思うが、この腕からは抜けられない。

「それでもなにがしかの役には立ってるんだろ」
「そんなことない。あれは……あれは偶然でっ」
「あばられんな。おとなしくしてろ」

ぎゅっと抱きしめられて、不本意なのに体から力が抜ける。
身を委ねてしまう。
こんなはずじゃなかったのに。
ちゃんと布団は別々に分けるつもりだったのに。
たまには手足を伸ばして眠りたいと主張して、喧嘩までしたのに。

――風邪をひいた。

別にこの腕がなかったのが原因というわけではないと思うけど。
でも。
口が裂けても言葉にするつもりはないけれど。

よく眠れなかったのだ。ひとりでは。

おかしい。
いままでは、ひとりでだってぐっすりと眠れてたはずなのに。
そんなに前の話ではないのに。

「……抱き枕」

ぼそりと呟く。

「は?」
「これは、抱き枕。安眠のための抱き枕なんだ」
「お前、いきなりなにを……」
「抱き枕はしゃべんない」

ピシリと言って三蔵の言葉も、自分の思考も遮る。
だってなんかいろいろごちゃごちゃ考えてると、余計なことまで考えそう。

抱き枕。
も、それでいいや、と思う。

「おやすみ」

ぎゅっと抱きついて、胸に顔を埋めた。