Addiction(9)


眠りに落ちる直前に引き寄せられた。

「……?」

ぼーっと目を開けると、暗いなかで三蔵がこちらをじっと見ているのに気がついた。
暗くてその表情はよくわからない。
けど。
手を伸ばして、三蔵の髪に触れる。
と、起きていることに気づいていなかったのか、三蔵がちょっと驚いたように息をつめた。

「……どうかした?」

聞いてみると、ふっと目をそらされた。

「なんでもねぇよ」

改めて引き寄せられる。
腕のなかに閉じ込められて、三蔵の顔が見えなくなる。
といっても暗くて、表情はほとんどわからなかったんだけど。
でも、ちょっと様子がヘンかも。

「三蔵?」

呼びかけてみる。
答えはない。
だけど、少し間があってから。

「……嫌、じゃないか?」

と聞かれた。

「なにが?」
「血を吸われること」

瞬間、銀色の髪の、お人形さんのような顔が浮かんだ。

「別に嫌じゃない」
「……そうか」

宥めるようにポンポンと背中を叩かれて、ぎゅっと三蔵の服を握っていたことに気づく。
ふっ、と息を吐き出すと、柔らかく抱きしめられた。
三蔵もなんかちょっと雰囲気が柔らかくなったみたい。
三蔵の方に頭を預けて、目を閉じる。

「でもさ、その後の無茶はやめろよな」
「無茶?」
「してるだろっ。いろいろ」

しれっという言い方にムカついてガバッと起き上がる。

「んなの、お前が悪いんだろうが」
「はぁ?」

わけのわからない言い分に、さらにムカつき度がアップするが。

「もう寝ろ」

ぐいっと引っ張られて、三蔵の方に倒れ込む。

「明日は早いんだろ」

ポンポンとまた宥められるように背中を叩かれる。
むぅ、と思うけど。
ここは暖かくて、心地よくて、そのうち眠りに落ちていった。