Addiction(14)
うららかな春の陽射しが差し込む司祭館。
なんだかのどか、という感じなんだけど、八戒は別みたいでまた留守番を頼まれた。
といっても平日だし、誰かがくるという予定もない。
もう春休みに入ってるから幼稚園もお休みで、静かなものだ。
それにしても今年は春が来るのが早い。窓の外に1本だけ植わっている桜のつぼみが淡くピンクに色づいて、日当たりの良いところがもう綻び出していた。
ぽかぽかと気持ち良くて、桜を見てるうちに上下のまぶたがひっつきそうになった。
いけない、いけない。
ぶんぶんと首をふって、眠気を飛ばそうとするけど。
「眠いなら、寝とけ」
隣で声がした。
「お前、ずっと働いてたろ」
年度末は記念行事があるからなのか。いつもより仕事が多いのに人の都合がつかなくて、バイトなのに結構辛いシフトでずっと働きづめだった。今日は、10日ぶりぐらいにようやくとれたお休みの日でもあった。
「でも留守番」
「俺がいるだろ」
……三蔵じゃ役に立たないかも。
前も思ったことを思うけど、さすがに口に出せない。
と、ゆっくりと頭を撫でられた。
それ、反則。
眠れ、良い子よ、なんて子守唄が聞こえてくるような気がする。
なんて思っているうちに、ふっと意識が遠のいた。
夕方になって帰ってきた八戒に、三蔵は『何もなかった』と告げたけど。
あとになってわかったことだが、三蔵ってば、電話線を抜いていたらしい。
しばらく司祭館に電話が通じなくて、ちょっとした騒ぎになるところだった。
ま、深刻なことにはならなかったけど。
ちなみに、電話線のことを教えたのは八戒だそうだ。
電話で通話ができることを興味津々で見ていた三蔵に『これで繋がっているんですよ』と。
『余計なことを教えちゃいましたかね』と一番迷惑を受けたはずの八戒はどこか楽しそうに笑いながら言っていた。
それにしてもこれじゃあ留守番にならないじゃないか、と三蔵によく言い含めておいたけどちょっと怪しいよなって思う。
だからそれからは寝ちゃわないように気をつけて、別に寝ちゃってないときでも電話線をチェックして帰るようになった。
――うららかな春の日のちょっとした出来事。