Addiction(18)


「三蔵」

扉をあけると、新聞を読んでる三蔵の姿がすぐに目に飛び込んできた。

いつも思うんだけど、こんな狭い部屋に、こんな綺麗な人がいるのは、そこだけ別空間って感じがする。
でも違和感はもうなくなっていて――というか、ここに三蔵がいてくれるのはなんだが安心する。
だれもいない部屋に帰ってくるのが寂しいことなんだって、もうすっかり忘れていたことに気づかされる。

「……早かったな」

少し驚いたような表情で、三蔵は新聞から顔をあげる。それにずんずんと近寄っていった。

「血」

で、シャツのボタンを二、三はずして詰め寄った。

「は?」

珍しく三蔵が呆気にとられたような表情を浮かべる。

「だから、血。三蔵、全然、血を飲んでないじゃんっ」

もともと色の白い人だけど、このごろは本当に透けるくらい肌が白くなったような気がする。確か、あの青い目をしたお人形みたいな男の人が来たときもこんな感じになっていた。血が足りない、ってあの人はいっていた。

「いきなりなんだ?」
「いきなりじゃないよ。だって、ちゃんと血を飲まなきゃ、三蔵……っ」

ゆるやかに自殺をしようとしている。
悟浄の言葉が耳によみがえってきた。

「死んじゃうなんて駄目だ。自分から死のうとするなんて……っ。生きているんだから、ちゃんと生きなきゃ。駄目だよっ。死んじゃうのは……っ」

言っているうちになにがなんだかわからなくなってくる。
涙がにじんでくる。

「落ち着け。どうした? 別に死ぬなんて言ってねぇだろ」

ぽんぽん、とあやすように三蔵が頭を撫でてくれる。

「だって、三蔵、全然血を飲んでないし……それとも、他の人から貰っているの?」

あの人――三蔵に、血をあげようとしてた。その光景を思い出す。
と、ふぅ、と三蔵がため息をついたのが聞こえてきた。

「……ごめん。余計なことだった」

そんなのは、三蔵の勝手だ。だれから血を貰おうと。
だれをその手に抱こうと。

「だれかになにかを言われたのか?」

離れようとしたところ、ふわりと抱きしめられた。

「別に、血は象徴みたいなものだぞ。糧となるのは血そのものじゃない。そこに宿る気――精気だ。だから、こうして触れ合うことでも取得できるから、心配するほどのものじゃねぇよ」
「でも――たかがしれてるって、あの人も悟浄もいってた」

あぁ、と思う。あのときの言葉の意味はそういうことだったんだって。
舌打ちしそうな気配が頭の上でした。

「な、三蔵。三蔵は本当に死のうとしているの?」

一瞬の間があって、答えが返ってきた。

「……してねぇよ」
「じゃあ、ちゃんと血を飲まなきゃ――」
「お前はそれでいいのか?」
「え?」

聞かれた言葉の意味がわからなくて、顔をあげて三蔵をまじまじと見てしまう。
いいもなにも、俺から言い出したことなのに――。

「お前がいいなら、それでいい」

軽く頬を撫でられて、それから、三蔵の顔が近づいてきた。