Addiction(22)
司祭館に花を届けにきた。
「あれ? 悟浄? なんでここに?」
そしたら、受け取りに出てきたのが悟浄でちょっと驚く。
教会の方にちょくちょく出入りしてたのは知ってたけど、ここまで入り込んでるとは思わなかった。
「……なんか微妙に失礼な言い方だな」
花を受け取りながら悟浄がいう。
「だいたいお礼もなしか、お前」
「お礼?」
「そ。このバイトを続けてられるのは誰のおかげかな」
いわれて、すっかり忘れてたことを思い出す。
この間、悟浄に露天で花を売るバイトを押しつけて帰っちゃったんだ。
でも、恩師が事故にあったんで慌てて帰ったとかなんとか、悟浄がごまかしてくれたんだった。
しかも押しつけたあとも、律儀に花を売ってたみたいで。
その日の売り上げは過去最高だったときいた。
……多分にナンパも目当てだったんだと思うんだけどね。その後、おんなじ場所で花を売ってたら『赤い髪の男性は?』っていろんな女性から聞かれたから。
ま。それはさておき。
「そっか、まだお礼いってなかったね。ありがとう」
「どういたしまして」
にっこりと笑った悟浄に腕をとられて引き寄せられた。
「なに?」
「お礼なら形で示してもらおうかなーって」
「……そのまま天国に行きたいわけ?」
「行かせてくれるならね。でも、天国に行かせてやるのは、俺の方だったりして」
……いや、そうじゃなくて。
「後ろ」
「は?」
「後ろ、殺気を感じない?」
いわれて後ろを振り返った悟浄が、さっと青ざめたのがわかった。
そこには怒りのオーラをまとった三蔵と、慈悲深い笑みを浮かべている割にはもの凄く怖い八戒。
「悟空、ご苦労さまでした。またお願いしますね」
にっこりと笑って八戒が悟浄の後ろの襟首を掴んで引き剥がす。
それをきっと無言で睨みつけた三蔵が、手を伸ばしてくる。
「じゃあ、僕は天国についてじっくりと語り合いたいんで、これで失礼しますね」
ぎゅっと抱きついてくる三蔵に辟易しつつ、なんだか売られていく子牛みたいだなーとか思いながら、手を振って二人を見送った。