Addiction(23)
ふわふわと、水の中を漂っているような感じがする。
柔らかく、絶対の安心に包まれている感じ。
このままずっと――。
そんなことを考えながら、意識が浮上した。
最初に目に入ったのは、こちらを見ている綺麗な顔。
「……さんぞ?」
「まだ寝てろ」
声をかけると、いきなり懐深くに抱き込まれた。
黙ってろ、とでもいうように。
「でも」
「今日は休みだろ」
ゆっくりと、あやすように背中を軽くたたかれる。
「で……も……」
すごく気持ちよくて、そのまま眠りの淵に落ちていこうとする意識をかろうじてつなぎとめる。
「今日、水族館……」
少し前。
一緒に夕飯を食べてたら、テレビに水族館が映ったことがあった。
なんだか三蔵がいたく感心してたから、今度の休みに連れて行ってあげる、と約束していた。
「今日でなくてもいい」
「でも、約束……」
「いいから、寝ろ。お前、このところ、働き過ぎだ」
頭の上に唇が降りてくる気配。
やわらかく抱きしめられて。
優しくゆっくりと撫でられて。
今にも眠ってしまいそうな意識はふわふわと揺れていて。
あぁ、やっぱり水の中を漂っているみたいだ。
そう思う。
――眠りに落ちる瞬間、ひらりと動く尾ひれと、きらりと反射する光が見えたような気がした。