Addiction(24)
月明かりのもとで見る姿はすごく綺麗。
輝く金糸の髪、白く透けるような肌。
どうしてこんなに綺麗な人がこの世にいるのだろう、と思う。
いや、人ではないからだろうか。
こんなに綺麗なのは、人とは違う存在だからだろうか。
夜の闇のなかでこそ、その美しさが冴え際立つ種族。
人とは異なるもの。
「――どうした?」
深い紫の瞳がまっすぐにこちらを見る。
その瞳に自分の姿が映っているのが見える。
だけど、それは。
「なんでもない……」
間違えてはいけない、と心に刻みつける。
この人がこうやって見つめてくれるのは、俺がこの人の糧だから。
俺が持つ血のため。
別に「俺」でなくても構わないのだ、この「血」でありさえすれば。
それを間違えてはいけない。
それを間違えれば。
それを忘れれば――。
「辛い、か……?」
低い囁き声に、ゆっくりと首を振る。
優しさだけが伝わってくる手に、堪えきれない微かな声がもれる。
「なら、なぜ、いつもお前は……」
目尻に落とされる暖かなもの。
零れ落ちる涙を拭ってくれたのだとわかる。
「……綺麗、だから」
呼吸を整えながら言う。
うまく声が出なくて、溜息のようなものになる。
「三蔵が、凄く綺麗だから。あまりに綺麗なものを見ると、胸の奥が痛くなる」
そう。
それも真実――だから。
お願い、だから。
気づかないで。
気づかせないで。
どうか。
どうか、お願いだから――。