Addiction(26)


篠突く雨のなかを歩いていた。
辺りはもう真っ暗で、視界が悪くて、あまり回りの様子はわからない。

けど。
こっちの方から『聲』のようなものが聞こえていた。

家に帰ったら三蔵がいなかった。
『今日も』だ。

3日くらい前に『ちょっと出てくる』と言ったきり、帰ってきていない。
最初は本当に迷惑だと思っていたのに。
いない、のは……。

なんだかいてもたってもいられなくなって、家を飛び出した。
考えてもみれば三蔵のことはなにひとつ知らない。
だから、このまま帰ってこなかったら。
このまま、いなくなってしまったら。
もう二度と――。

ギリッと唇を噛みしめた。
と、そのとき。

「三蔵っ」

闇のなかに人影が見えた。
街灯の届く範囲から逸れていて、その姿はおぼろげだけど、それでもわかる。絶対に三蔵だ。

「三蔵」

名前を読んで駆け寄る。
が。
三蔵からの反応はない。
ぼんやりとした瞳でどこを見るでもなく、ただ雨のなか、すぶ濡れで立ちつくしている。

「なにやってんだよ、もう」

傘をさしかけて、タオルでも持ってくれば良かったと思いつつ、ポケットを探ってハンカチを取り出すと、水滴が落ちる髪を拭おうとして。

「……っ!」

パシッと手を振り払われた。
びっくりする。
三蔵にそんなこと、されたことなどない――。
が。
自分の動きで我に返ったらしく、三蔵の目が焦点を結んだ。
そして。

「悪ぃ……」

小さな声とともに近くにと引き寄せられた。
少し震えているようなそんな気配に。

「三蔵……?」

戸惑いつつも柔らかく抱きしめ返した。