Addiction(29)


食卓、兼、机でもある家具調こたつに向っていたら、後ろから三蔵にのしかかられた。

後ろから抱きしめられるのとはちょっと違って、ただのしかかられているだけで拘束されているわけではないけれど……なんというか――おんぶお化け? みたいな感じでちょっと動きにくい。
振り払おうとするけれど、ぴったりくっついて三蔵はどいてくれない。

「重い、三蔵」
「俺は重くない」

……あー、確かに痩せてはいるよね。
でも、体重っていう意味じゃないんだけど。

「暑苦しいし」
「お前の方が体温は高い」

……確かに三蔵は人間でないだけあって、ほとんど体温は感じられない。
だけど、物理的なことでなくて。

「邪魔だし」
「なにもしてねーだろうが」

そう言いつつも、右肩に乗っていた顎はどかしてくれる。
これで右手を動かせる、と思ったけど。
今度は左肩に顎が乗ってきて。

「……三蔵」
「なにをしてるんだ?」

覗きこむように手元を見て、三蔵が話しかけてくる。

「ブーケのイメージデザイン。頼まれたから」

教会の信者で、これから結婚するという知り合いの女の子にブーケを作るように頼まれた。
個人的に頼まれたことなのでバイト先のお店ではできず、こうしてお休みの日にスケッチブックにいろいろとデザインを描いていたのだけど……。

朝からずっとだったから、しびれを切らしたのだろうか。
どうやら『構え』ということらしい。

そりゃ、ま、ちょっと前みたいに落ち込んでるっぽいのよりもいいんだけど。
このところ梅雨の合間って感じでお天気の良い日が続いているからかな。
そういうのがなくなって、ほっとしていたところだった。

でも、邪魔なのは、邪魔で。
こっそりとため息をついた。