Addiction(38)


急速に高められる熱に、いつも体がついていかない。

それは快楽というよりも、苦しさを伴うもので。
でもそのうち頭のなかが真っ白になって、なにもわからなくなる。

もしも。
もしも、もっとゆるやかに高められるのだったら。

そうしたら――。

「……大丈夫か?」

優しい手が頬に触れた。

「だ……いじょうぶ……」

乱れる呼吸をどうにか制して答える。
閉じていた目を開けると、すぐ近くに少し心配そうな綺麗な顔があった。
それを目にした途端、たまらないような気持ちになった。

どうして――。

どうして、そんな表情をするのだろう。
ただの糧なのに。

「辛いなら、ちゃんといえ」

零れ落ちる涙を唇でぬぐわれる。

ダメだ、と思う。
こんな風に優しくされるのは、やっぱりダメだ。

「大丈夫、だから――」

手を伸ばして、これ以上、隙間がないくらいに抱きつく。
そうして、先を促す。

早く、なにもかもわからなくなってしまえばいい。
なにも考えることのないように。
そうでなければ、きっと心が壊れてしまうから。

「三蔵――」

その名を呼ぶたびに走る胸の痛みも、すべて消えてしまうほどの激情を。
それだけを、ただひたすらに願う夜――。