Addiction(44)
花を抱えて、ウチに帰ってきた。
一応、教会にも寄ってきたけど、最近、三蔵は教会にはいない。
俺のことで八戒とちょっとあったからだろうか。
あそこは三蔵にとって、居心地の良さそうな場所だったのに。
少しだけ心が沈む。
ふっと息をついて……。
ふと、いましているのが『泣きそうな顔』なのかな、と思う。
だとしたら、これは違う。
三蔵のせいじゃない。
大きく息をついて、さっきみたいな顔をしないようにして、扉を開けると、三蔵がいた。
ちょっとほっとする。
最近、三蔵は教会には行っていないはずなのに、ウチにずっといるわけではなくどこかに出かけているような――そんな気配がある。
別にどこに行こうと詮索する気はないのだけど。
正直に言えば気にならないことはないのだけど。
でも、聞いたら鬱陶しがられそうで聞けない。
このままどこかに行ってしまったら、どうしよう――。
ときどき、そんなことを考えてしまう。
――なんてことを考えていたらいけない。
気を取り直して、つかつかと三蔵の方に歩み寄り花束を差し出す。
三蔵は少し意表を突かれたかのように、微かに目を見開く。
「あのね、別に悲しいわけじゃないから」
なんと言っていいのかわからなくて、単刀直入に思ったことを口に出す。
と、三蔵の表情が訝しげなものになった。
「別に、三蔵と一緒にいて悲しいってことはないから」
言っていることが滅茶苦茶だと自分でも思う。
なにが言いたいんだ、とも思う。
と。
ふわりと抱きしめられた。
あ、と思う。
しばらく、ずっと触れなかったのに。
どうしてだか、ずっと触れてこなかったのに。
正確にいえば、まったくの接触がなかったわけじゃないけれど。
でも、こんな風には触れてこなかった――。
どうしてだか泣きそうになって、慌てて涙を押し留める。
「三蔵」
小さく呟くと、背中に回された手に少しだけ力が入って。
なんだか安心して身を任せた。