Addiction(45)
お月見は二回するものなんだよ。
そう言って三蔵を誘って、先月と同じく教会の屋根の上にきた。
でもあいにくの曇空で、月は見えそうで見えなかった。
風が強く、雲の流れが速いから、そのうち見えるかもしれないけれど。
そう思って、しばらく屋根の上で頑張ってたんだけど。
「くしゅん」
くしゃみが出てきた。
高いところだからか、風が通るからか、ちょっと寒い。
ふるっとちょっと震えが走ったところで。
ふわり、と抱きしめられた。
「さんぞ」
三蔵の方が体温が低いんだけど、こういうときはあったかい、って思う。
「降りるぞ」
頭のうえから声が降ってくる。
「ん……、でも」
「風邪、ひくだろうが」
「大丈夫」
「大丈夫じゃねぇよ」
ふわり、と今度は体が浮く。
抱きかかえられる。
「三蔵」
こういう――お姫さま抱っこみたいなことは気恥ずかしい。誰も見ていないところでも。
普通に、でいいんだけど。
そう思って、腕から逃れようとするけれど。
「大人しくしてねぇと置いてくぞ」
そう言われて、う、と体が固まる。
って、それ、ずりぃし。
「そしたら、八戒に降ろしてもらう」
少しむくれたように言うと、溜息が聞こえてきた。
そしてもっと近くにと引き寄せられる。
「渡すかよ」
耳元で声がする。
「三蔵」
少し顔をあげると、紫暗の瞳と目が合った。
「八戒とまだ喧嘩……」
――しているのだろうか。
喧嘩――というか。
そうとも言えない気がするけど。
「別に……そうじゃねぇ」
三蔵はそう言うけれど。
じっと見つめていたら、ふわりと宙に浮かんだ。
「もう少しだけ……待ってろ」
その言葉の意味はよくわからなかったけど。
遠くを見つめる横顔に、なんだかなにも言えなかった。